【侮れない筋肉の凝り】

営業職の山さん(48歳)は、連日の長時間運転で肩や首の凝りがひどく、頭痛も起こりがちだ。改善策や予防法を指導してもらおうと整形外科を訪れた。

筋肉の凝りは、首、肩、背中、腰、頭、顔など、体の様々な部位に起こる。「たかが凝り」と思いがちだが、ひどくなると体の動き全体に影響したり、不快感や痛みに悩まされたりする。

凝りの病態はあまりはっきりしないこともあるが、要因の1つには筋肉の疲労が挙げられる。長時間のデスクワークやパソコン操作などで同じ姿勢を続けていると、肩や腰の筋肉に凝りが発生することがよくある。これは筋肉が疲労により硬くなり、自力では緩められなくなった状態だ。特定の筋肉ばかり使い続けると、筋肉の中の酸素が不足して疲労物質(老廃物)である乳酸がたまり、凝り感となって表れる。

血行不良もまた、筋肉の凝りを増長させる。筋肉は収縮と弛緩を繰り返して血液を循環させ、老廃物を取り除く働きをしているが、血液の流れが悪くなると、乳酸が蓄積して、筋肉が硬直する。それが、肩や腰の血管や末梢神経を圧迫することで、凝りや痛みをますます感じる。

また、末梢神経が傷つき、痛みを脳が感知すると、痛む箇所の筋肉をさらに収縮させるという悪循環を生み、凝りや痛みが慢性化する。凝りが高じると、筋肉の一部がしこりになって、骨のように硬くなることもある。そのほか、自律神経のバランスの乱れによって、筋肉が凝ることもある。

整形外科的には、検査などでほかの病的障害を除外してから、ただの凝りと判断する。凝りとして症状を感じるようになるには、閾値がある。運動不足など凝りの原因があっても、すぐに筋肉の凝りになるわけではなく、同じことをしていても凝りに至らないこともある。つまり、凝りは原因の日々の積み重ねが、一定の間借を超えた時に起こるのだ。

適度な運動と血行促進を
加齢により筋肉の繊維1本1本が細ると、同じ動作をするのにも筋肉に余計な負荷がかかる。しかし、高齢になっても運動などで鍛錬すれば、筋肉の維持、回復は可能だ。50代以降は、特に意識してほしい。その際には、1つだけの運動ではなく、「筋力・体の柔軟性・バランスカ」の3つのポイントを意識したメニューを組むといい。運動後のクールダウンも必ず行う。

筋肉の凝りの改善法には、血流を促すストレッチ、マッサージ、入浴、お灸、服薬などが効果的だ。湿布を使う場合は、急性なら冷湿布を、慢性なら温湿布を。予防には、適度な運動を心がけ、日常や就労時間の合間にストレッチや簡単な体操などを組み込み、適宜体を動かすこと。目を酷使したり、疲れやストレスをためたりしないよう心がける。ビタミンBl、ビタミンB12、ビタ ミンE、葉酸などのビタミンを摂取することも有効だ。体の冷えや肥満が筋肉の凝りの要因になることもあるので注意しよう。
(談話まとめ:杉元 順子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2012/11/19号、松原 正明=日産厚生会玉川病院(東京都世田谷区)整形外科部長]

[イラスト:市原すぐる]

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