【目薬は1滴で十分】

最近、日のかすみが気になるTさん(40歳)。疲れ目用の目薬を、たっぷりと頻繁に差しているが、今度は日の乾きが気になるようになってきた。

目薬は、ドラッグストアなどで気軽に手に取りやすい薬の1つだ。ところが、身近である一方、間違った使い方をするケースが少なくない。

まずは1回に差す量。目の中に行き渡らせようと、2〜3滴差す人もいるが、実は1滴で十分だ。目薬1滴の分量は約0.04〜0.05ミリリットルであるのに対し、まぶたの中に保持できる量は0.02〜0.03ミリリットル。1滴でも目薬があふれてしまうので、それを補いたい気持ちになるのかもしれないが、その必要はない。

目薬を行き渡らせるためには、むしろ、差した後の“作法”が大切だ。目頭には、涙点という鼻腔に涙を排出するための孔がある。そのため、薬液が鼻の方へ流れ出てしまわないように、差した後は目を閉じ、涙点をふさぐように目頭を指で軽く押さえて、1分ほど静かにしているのがいい。また、目薬を差した後のまばたきも控えたい。 過度の使用も要注意
ドライアイや疲れ目では、不快な症状を早く取ろうと、1日に何度も点眼するケースが多い。しかし、これは逆効果になることがある。

眼球の表面は、内側から粘液のムチン層、涙の層、薄い油の層の3層で覆われている。ムチン層は、涙を眼球の表面に保つなどの働きがあり、涙は眼球に栄養を与えるとともに抗菌成分により感染を防ぎ、油層は涙の蒸発を防ぐ役割を果たしている。しかし、過度に何度も目薬を差すと、この3つの層を乱し、油分やムチンなどを洗い流してしまうため、かえって目が乾いたり、異物感を覚えたりするようになる。

特に、塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤入りの目薬の場合、頻繁に差すと防腐剤が眼球の表面を傷つけるなど、副作用を起こす可能性もある。医師の指示がない場合には、1日の点眼回数は、6回程度に抑えた方がいい。 また、目薬を差す時には、まつげやまぶたに目薬の容器の先が接触しないように留意してほしい。残った目薬に雑菌が繁殖してしまうことがある。雑菌による感染を防ぐためにも、目薬はばかの人と共有しないことが大切だ。

上手に目薬が差せない場合には、仰向に寝るか、上を向いて「あっかんベー」をするように片手の指で下まぶたを下げ、さらに口を開けると目を開きやすい。目薬を差す手を安定させるには、反対の手で拳を作り、それを目の下の頬骨のあたりに置いて下まぶたを引き下げ、手を拳の上に乗せて点眼するといい。

目薬が残った場合、処方薬は開封後1週間から1カ月、市販薬は開封後2カ月を過ぎたら廃棄する。市販薬を使う場合は、1〜2週間たっても効果がない、むしろ悪化したということがあれば、症状と目薬が合っていない可能性がある。その際には、速やかに眼科で診察を受けてほしい。
(談話まとめ:武田 京子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2012/09/17号、石岡 みさき=みさき眼科クリニック(東京都渋谷区)院長]

[イラスト:市原すぐる]

戻る