【心の病気・不調の薬物療法】
厚生労働省が3年ごとに行っている患者調査によると、「精神及び行動の障害」で医療機関で受診した患者数は、2008年で約23万2000人。2002年は約20万人、2005年は約22万5000人と、 増加の一途をたどっている。大半が精神科や心療内科で受診していると考えられ、それを裏づけるように、精神科クリニックが全国的に増えている。














心の病気・不調における治療には、精神療法、適切な休養と並んで、薬物療法がある。心の病気・不調を骨折に例えると、休養は患部をギプスで固めて安静を保つこと。薬物療法は薬を用いて患部の腫れや痛みを抑えたり、骨を強くしたりすること。精神療法は患部を再び動かす支援や、また転んでしまわないように支援するリハビリを行うことに当たる。つまり、薬物療法は心の病気・不調の急性期や維持期の治療において、重要な役割を担う。

疑問があれば主治医に相談を
心の病気や不調に対して使用される薬(向精神薬)は、大きく分けて抗うつ薬(抑うつ気分、意欲低下、興味の減退などのうつ症状に対して用いられる)、抗不安薬(不安、焦燥感、緊張などの症状に用いられる)、気分安定薬(操うつ病のような気分の波が見られる場合に用いられる)、抗精神病薬(幻覚、妄想、強い不安などに用いられる)、睡眠薬がある。

これらの分類の中でも、さらにそれぞれの特徴がある。例えば、抗うつ薬はSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニンーノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬などに分類される。

抗うつ薬は服用してすぐに効果が出るわけではない。少なくとも2週間は継続して服用し、薬効を判断する。そして十分な効果がない場合、あるいは副作用のため服用が継続できないと判断された場合は、薬の量や種類を変えてさらに経過を見る。薬の効果や副作用の出方は個人差が大きいので、自己判断で服薬を中断したり、服用量を増減したりしてはならない。自分の薬を他人に飲ませることも危険であり、取扱業者でない者が向精神薬を他者に譲渡することば法律で禁じられている。

薬をほかの治療法と組み合わせることで、心の病気・不調を快方に向かわせることが十分に期待できる。それには、治療に関する疑問点があれば、積極的に主治医に相談することだ。

(出典:日経ビジネス、2012/08/06-13号、吉村 靖司=神田東クリニック副院長)

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