【顔にできる色素斑】

最近、顔のシミが気になるようになったFさん(49歳)。テレビや雑誌で目にする企業経営者や政治家の顔のシミも目につく。治療や予防はできないものか。

中高年の顔に見られるシミは、正式名を「老人性色素斑」と言う。原因は、紫外線による皮膚の老化だ。表皮の表面に近い部分にメラニン色素が沈着して、褐色や黒褐色の平らな斑点ができる。皮膚の老化現象の1つだが、20代からできることもある。

シミは多かれ少なかれ誰にもできるもので、気にしないまま過ごす人が大半だが、最近は病院を訪れる人も少なくない。治療の第1選択肢はレーザー治療だ。Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザーなどを照射して色素を破壊する。簡単で合併症も少ない治療法だが、結果には個人差がある。色が薄くてぽんやりしたシミよりも、濃くてはっきりしたシミの方が、レーザーへの反応が良く効果も高い。ただし、色素破壊の際に起こる炎症の跡が薄く残るケースもある。

レーザー治療のほかには、ハイドロキノンやルシノールといった美白剤での治療法もあるが、こちらも効果には個人差がある。

いずれの治療法でも保険は適用外なので、費用は施設によって異なる。 紫外線から皮膚を守る
老人性色素斑の一部が角化して、ザラザラした厚みが出てくることがある。これは「老人性疣贅(ゆうぜい)」で、同じく皮膚の老化現象だ。気にならなければ治療の必要はないが、取りたい場合は、液体窒素を使用し、冷凍して組織を破壊する。

長期にわたる紫外線の影響が原因でできる皮膚疾患はほかにもある。

「日光性角化症」は皮膚の前ガン病変で、高齢者に多く見られる。薄い赤色や赤褐色で、表面が角化してザラザラしたり、平らに盛り上がったりする。赤みを強く帯びている場合は、早期に受診してほしい。

「悪性黒子(悪性黒色腫)」も、強い紫外線に繰り返しさらされることが原因の1つとなる、悪性度の高い皮膚ガンである。顔や手足のほか、背中、足の裏、爪などにもできる。黒褐色で形が不規則な1cm余りの病変に、色の濃淡が目立ってきたら、直ちに受診してほしい。悪性病変が表皮から進行して真皮に進むと、死に至ることもあるので、早期発見・受診が重要だ。

「基底細胞ガン」も高齢者の顔面にできる頻度の高いガンで、ホクロと間違えやすい。悪性かどうかば、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡で、皮膚の構造を観察して見極める。

老人性色素斑をはじめとするこうした皮膚疾患を、完全に予防することは難しい。皮膚を守るには、直射日光にできるだけ当たらない、日焼け止めや帽子で遮光するといったことに尽きる。近年は、様々な種類の日焼け止めが市販されている。自分の肌と使い心地の好みに合ったものを試してみるといいだろう。
(談話まとめ:杉元 順子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2012/07/16号、出月 健夫=NTT東日本関東病院(東京都品川区)皮膚科主任医長]

[イラスト:市原すぐる]

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