【「位置関係」を意識する】

去る5月21日の朝、日本の広い地域金環日食が観測されたが、見られただろうか。太陽、月、地球の位置関係が見事に揃った条件下で起こる極めてまれな天文現象であり、宇宙の神秘を 体感できたイベントに興奮した人も多かっただろう。

さて、天体から身の回りに視点を戻してみると、自分を取り巻く人との位置関係はどうだろうか。今回は、人と人とがコミュニケーションを取りやすい位置関係、距離感について考えてみたい。

他人と話している時、「この人は随分近くに寄って話してくるな」と感じたり、逆に「そんなに距離を置かれると話しにくいのに」と思ったりするような場面はないだろうか。これは、その人の「パーソナルスペース」による感覚である。

パーソナルスペースとは、コミュニケーションを取る相手との物理的な距離のことを言い、相手との関係性や場面によって異なる。米国の文化人類学者、故エドワード・ホール氏は、パーソナルスペースを「密接距離」「個体距離」「社会距離」「公衆距離」の4つに分類している。

密接距離は、家族や恋人などごく親しい人の場合で、約45cmまで。個体距離は、友人と個人的会話を交わす場合で、2人が手を伸ばせば相手に触れるくらいの45〜120cm程度。社会距 離は、知らない人との会話や商談をする場合などで、お互いの体に触れることができない120〜360cm程度。公衆距離はそれ以上で、講演や公式的な面会をする場合などだ。

ビジネスでは1mが目安
一般的に、ビジネスにおけるパーソナルスペースは、半径1m程度と言われている。これは個体距離の範囲内で、やや社会距離寄りの位置に当たる。もちろん、個人によってパーソナルスペースの感覚には違いがあり、さらに言えぼ性別(女性よりも男性の方が広い)や国民性などによっても異なる。

1mを目安として話した時に、相手が身を乗り出してくる場合は、相手のパーソナルスペースから離れすぎているということになり、逆に後ずさりしたり、のけぞるようなしぐさをしたりする場合は、パーソナルスペースに入り込みすぎているのかもしれない。そんな時は、様子を見ながら、それとなく相手との距離を修正してみよう。

物理的な距離がお互いの適切なパーソナルスペースよりも近すぎるものの、その場から動くことができない場合は、体を斜めに向けたり、視線を外したりすることで、感覚的な距離を広げる効果がある。

金環日食によって地球と太陽の距離や位置を改めて意識したのをきっかけに、ビジネスシーンでの会話においては、このパーソナルスペースを意識しておくといい。さりげなく適切な距離感をつかめば、良好な関係性を構築するのに役立つだろう。

[出典:日経ビジネス、2012/06/11、吉村靖司=神田兼グノニック副院長]

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