【ペットからうつる感染症】

マンション購入を機に、室内犬を飼い始めたIさん(49歳)。仕事から帰るとペットを抱き上げて癒やされる毎日だったが、発熱が続き、リンパ節が腫れているようだ。

2011年にべットとして飼われた犬猫は約2150万頭(ペットフード協会調べ)に上り、ペットブームは衰える気配がない。ペットを飼うなら、ペットからうつる可能性のある感染症を知ることが大切だ。病原体はウイルスや細菌、寄生虫など様々で、日本には約30種類のペット感染症があり、正式には「人獣共通感染症」と言う。

日本で一番多く見られるのが猫ひっかき病だ。バルトネラ菌を持ったノミの吸血によって猫に感染し、それに人がかまれたりひっかかれたりすることで発症する。傷口の化膿、発熱やリンパ節の腫脹を引き起こし、重症になると、肝臓が腫れたり、髄膜炎になったりすることもあるので、一般的には抗生物質を投与して処置をする。

近年注目を集めたものはQ熱やカブノサイトファーガ感染症で、どちらも犬猫から感染する。Q熱は軽い発熱や呼吸器症状を起こし、重症になると、気管支炎や髄膜炎などを引き起こす。 カブノサイトファーガ感染症は、発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などが見られ、重症になると敗血症や髄膜炎を起こし、まれに死に至ることもある。

妊婦がいる家庭で猫を飼っている場合は、トキソプラズマ感染症に配慮したい。妊婦がそれに初めてかかると、流産したり、新生児が水頭症になったりすることがまれにある。

近年、マンションなどの集合住宅の増加に伴い、ペットの室内飼育が増え、ウサギ、ハムスターなどの齧歯(げっし)類やトカゲ、蛇などの爬虫類まで、動物の種類も多様化している。特に、爬虫類によるサルモネラ菌に感染すると下痢症状を引き起こすので注意が必要だ。

直接の濃厚な接触は控える
ペットをはじめとする動物は、何らかの病原体を持っているが、だからといって、心配しすぎることはない。飼い主が正しい知識を持ち、予防を心がければ、ペットと良好な関係を築くことができる。また、ペット感染症は健康な人が感染しても、症状が出ないことがばとんどだ。感染症にかかりやすいのは、仕事などの疲れで体力が落ちている人や高齢者のほか、体を守る免疫機能が低い糖尿病や肝臓の持病がある人もリスクが高い。

一番の予防法は、直接の接触をなるべく控えること。ペットにキスする、自分と同じ著を使って食事を与える、一緒の布団で寝るなど、濃厚な接触は避けた方がよい。そのほか、獣医師による定期健診をお勧めする。動物の爪は切り、糞便はその都度処理すること。家族を攻撃してかむなどしないように、きちんとしつけることも重要だ。

ペットにかまれたり、ひっかかれたりした時は、外科系のかかりつけ医で受診すること。発熱などの症状が出ると風邪と間違われやすいので、ペットに何をされたか伝えるのを忘れないでほしい。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2012/06/04号、荒島 康友=日本大学医学部(東京都板橋区)助教・日本感染症学会評議委員]

[イラスト:市原すぐる]

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