【視野の一部が欠ける】

書類が以前よりも見えにくく感じていたSさん(49歳)。老眼が進んだのかと思っていたら、健康診断で眼科受診を勧められ、検査の結果、緑内障と診断された。

緑内障は、視野が狭くなったり、一部が欠けて見えなくなったりする病気で、大半の人は自覚のないまま病状が進行する。人は両目でモノを見るため、片目の視野の一部が欠けても、もう片方の目がその視野をカバーする。そのため、症状がかなり進まないと、視野の異変に気づくことが少ないのだ。

一方、症状が突然表れるタイプの緑内障もある。眼圧の著しい上昇が原因で、眼痛、充血、目のかすみのほか、吐き気や頭痛に見舞われる。視野も視力も急速に失われていくため、一刻も早い処置が必要となる。こうした急性型の緑内障はもちろん、症状がゆっくり進む慢性型でも、症状を放置すれば、最終的には失明に至ることもある。

症状が重篤になってから受診する患者さんに高齢者が多いためか、高齢者の病気と思われがちだが、働き盛りの中高年層にとっても身近な病気と言えよう。眼底撮影や眼圧検査などで、早期発見されやすくなったうえ、高齢化も伴い、緑内障の患者数は増えている。

進行を阻むために早期治療を
かつては、眼圧の上昇が原因で起こる病気と考えられていたが、近年、正常眼圧でも発症することが明らかになつてきた。眼圧の上昇で発症する場合は、高眼圧となった眼球の影響で視神経が障害を起こして、視野が欠損する。だが、正常眼圧で発症する場合は、視神経に障害を起こす要因が明らかになつていない。ただ、患者さんに低血圧や低体温症、頭痛持ちの人などが多いことから、血行不良が関係しているのではないかと言われている。

また、近視の人も、膨らんだ眼球のせいで視神経が脆弱になっており、正常眼圧でも緑内障を起こしやすい。糖尿病、ぶどう膜炎などの患者さんのほか、ステロイド剤を使用している場合も、緑内障のリスクは高くなる。例えば、アレルギーなどでステロイド剤入りの目薬を使用している場合、使用量が過多となると眼圧が急激に上昇し、緑内障を起こすこともある。

緑内障は、いったん発症すると、治療しても欠損した視野を取り戻すことができない。しかし、投薬や手術により症状の進行を遅らせられるので、自覚症状がないうちに早期発見、早期治療を行えば、日常生活に支障のない視力や視野を保つことが可能となる。

治療は、点眼薬を用いて眼圧を下げることから始まり、それでも下がらなければ内服薬を使用する。たとえ正常眼圧であっても、眼圧を下降させれば、症状の進行を阻むことができる。症状の重さによっては、レーザー治療や外科的手術も行う。症状が軽いうちなら、点眼薬だけの治療で済む。

そのためにも、健康診断や人間ドックなどで、緑内障の疑いが指摘されたら、早急に眼科で検査を受けること。緑内障と診断されたら、すぐに治療をスタートさせるのが望ましい。
(編集まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2012/05/21号、井上 賢治=井上眼科病院(東京都千代田区)院長]

[イラスト:市原すぐる]

戻る