【「組織公平性」の実践】

「当社は公平な組織か」「うちの上司は公平であるか」ということが、従業員や部下のメンタルヘルス(心の健康)に大きな影響を与えることが多くの研究で分かってきた。「平等」という言葉もあるが、「公平」とは少々異なる。公平とは、「みんなが納得できる不平等」である。

例えば、節分の日に、自分の年齢の数だけ豆を食べるという行き渡った慣習に対し、その不平等に文句を言う人は少ない。テストで100点だった人はご褒美がもらえるということに対しても同様だ。だが、ご褒美が周知されていなければ「最初に言ってくれていた ら頑張ったのに」という不満が生じる。

組織における公平性、つまり「組織公平性」には、4つの尺度がある(表参照)。
@分配の公平性とは、給与や役割の分配の公平性のこと。仕事配分が特定者に偏らないよう配慮されている、予定外の急な仕事が公平に配分される、仕事の配分が各自の能力に見合ったものである、といったものだ。

分配に至る手続きに関するものがA手続きの公平惟であり、大変重要な要素と考えられている。評価基準が分かりやすく説明されている、意見対立の調停では理由がきちんと説明される、予定外の急な仕事はその理由が説明される、不公平感があった時に理由や代償が説明される、などがある。

B情報の公平性は、本来の指揮命令系統が明確であるだけでなく、緊急事態での変更などが明示されている、職場のルールがはっきり認識されている、出張者など直接指揮できないメンバーにも継続的に情報が提供されている、などが含まれる。分散事業所など が多い企業では本部の情報をいかに公平に伝達できるかが、組織全体のモチベーションの維持につながる。

最後のC対人関係の公平性だが、部下の一人ひとりと公平に向かい合っている、部下の特性に合ったコミュニケーションが取れる、部下の人格を尊重し誠実に接している、などがある。これは特に、女性に対して重要な要素と言われる。

実践とともに周知が重要
これらの組織公平性は、日頃の社員のメンタルヘルス向上のみならず、メンタルヘルス不調で休んでいた社員が復帰する時にも応用可能だ。復帰者は通常業務の負荷を軽減して職場に戻ってもらうことになる。猫の手も借りたい職場では、業務軽減という不平等から、社員の不満も生じる。職場の管理者が、組織公平性のプロセスを踏むことで、部下たちの理解を得ることが大切だ。

公平性の実践で最も大切なのは、公平であるだけでなく、公平に対応していることが組織内で周知されることである。職場には様々な難しい問題が生じる。それらの難題に、懸命に公平に対応しようとしている姿そのものが重要なのだ。これらはパワーハラスメント防止にもつながる。

[出典:日経ビジネス、2012/05/14号、高野 知樹=神田東クリニック院長]

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