【糖尿病の教育入院】

健康診断で血糖値が高かったHさん(49歳)。病院で検査したところ、糖尿病と診断され、教育入院を勧められた。教育入院とは、どんなことをするのだろうか。

糖尿病は、インスリンというホルモンが不足したりうまく作用しなかったりするために、体のエネルギー源であるブドウ糖が細胞内に取り込まれなくなる病気である。ブドウ糖が利用できないために高血糖を生じ、神経障害、網膜症、腎症など深刻な合併症を引き起こす恐れがある。

日本人の糖尿病の場合、95%以上は食事や運動などの生活習慣が関係する2型の糖尿病だ。ちなみに、1型の糖尿病は生活習慣病ではなく、自己免疫疾患と考えられている。

糖尿病はいったん発症すると完治しない。しかし、適切な血糖のコントロールができれば、生活に支障を来すことはない。

そのため、2型糖尿病では、症状に応じた薬物療法と並行して、食事や運動など生活習慣を見直すことが重要だ。身体活動量などに合わせた食事量で、必要な栄養素を摂取できるバランスの良い食事を取り、自分に合った運動メニューを作成して運動を続ける。そうした自己管理によって、血糖を適切にコントロールすることが必要なのだ。

しかし、生活習慣の是正は意外に難しい。そこで、糖尿病を正しく理解するとともに、栄養士が考えた適正なカロリーの食事を取り、無理のない運動をして血糖コントロールの方法を体験的に学習するのが、教育入院だ。食事療法のためのエネルギー計算の方法 や、バランスの取れた食事メニューの作り方も学ぶ。入院期間は通常1〜2週間程度。主治医が勧める場合もあるし、患者が自ら進んで入院する場合もある。健康保険の適用対象だ。

入院期間やプログラムは、医療機関によって異なる。例えば東京慈恵会医科大学では、一般の医療機関から患者が紹介されてくる特定機能病院であることもあり、教育的・体験的なプログラムだけではなく、治療法の検証・変更や、合併症のチェックにも力を入れている。

慈恵医大の調査では、教育入院を体験した人の方がしていない人よりも適切に血糖コントロールができ、治療効果が高いことが分かっている。教育入院の意義は大きいと言えるだろう。

週末や短期間の教育入院も
しかし、近年ボトルネックになっているのは入院期間だ。特に働き盛りのビジネスパーソンが仕事を1週間も休むのは難しいだろう。そこで慈恵医大のように週末を利用した4日間コースを用意したり、教育的・体験的な内容に絞ってより短期間の教育入院を行っ たりしている医療機関もある。

外来での指導を強化している医療機関も多い。慈恵医大の例では、糖尿病の認定看護師や糖尿病医療指導士の資格を持つ栄養士が外来で食事や運動を指導している。まとまった休みが取りづらい人は、そうした医療機関で指導を受けるのも1つの方法だ。
(談話まとめ:繁宮 聡=医療ジャーナリスト)

(出典:日経ビジネス、2012/05/07号、宇都宮 一典=東京慈恵会医科大学(東京都港区) 内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授]

[イラスト:市原すぐる]

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