【自覚ないギヤンブレ依存症】

会社帰りに、気分転換がてらパチンコ店に寄ったGさん(44歳)。その後、仕事でストレスがたまるたびにパチンコ店に足が向き、入店回数が増えていった。

その昔、依存症と言えばアルコールや薬物が主だったが、10年ぐらい前から、ギャンブルに関する患者が目立つようになった。現在では、推定300万人いるとも言われている。マージャン、競馬、競輪、競艇など種類は様々あるが、圧倒的に多いのはパチンコ依存症だ。パチンコ店はどの町にもあり、手軽で入りやすいのだろう。

「今日は負けたから帰ろう」と、自己抑制ができたり、小遣いの範囲内で楽しめるなら何ら問題はない。だが、毎日ギャンブル場に足を運んだり、借金してまでするとなると、依存症の範疇だ。このような依存症は、「病的賭博」といった病名がついており、専門家は立派な病気として取り扱っている。

ギャンブル依存症になりやすい人は、物事を探く考えない、すぐにキレやすい、社会性がないなど、人間的に未熟な傾向がある。誰もが最初は趣味で収まっているのだが、仕事に疲れている、酒が飲めずにストレスを発散する場がない、配偶者が口うるさくて自 宅が安らげない、などの理由でギャンブル場へ寄り道する回数が増え、ハマってしまう人が多い。

ギャンブル依存症で最大の問題は、借金だ。配偶者や親に嘘をついて、カネを出させたり、消費者金融やヤミ金から借りたりする。借金を家族が立て替えると、またギャンブルで借金を作る。その繰り返しで、家族が神経症などを患ったり、離婚したり、会社のカネを使い込むなどの犯罪に及んだりと、様々な支障が起こってくる。

薬では治らないこの病気は、残念ながらこれといった治療の決め手はない。家族が「日常生活に支障を来している」と感じたら、まず保健所や保健福祉センター、病院やクリニックの精神科に、本人を連れて相談に行ってほしい。本人に病気だという自覚はない ので、自ら受診する人はまずいない。

「今日しない」努力を一生続ける
治療法は、専門医が行うミーティングに参加することが第一歩。「家族」「ギャンブル」などのテーマで、同じ境遇の人同士が、発言したり、話を聞いたりしながら己を見つめ直す。時には、将棋などを楽しむ日もある。回復を目的とした自助グループに参加することも有意義だ。そのような場に定期的に足を運び、一度もギャンブルをしない日が3年くらい続くと、少しは回復したと思っていい。ただし、「ギャンブルをしたい」気持ちは常にあるため完治はなく、「今日、ギャンブルしない」ことを、一生続けていくだけだ。

ギャンブル依存症にならないためには、趣味を複数見つけ、興味をギャンブルに固定しないようにしたい。また、ギャンブルをするのであれば、「2000円まででやめよう」などと、小さい金額で収めるように心がけたい。適度であれば、心のリフレッシュに役立ち、活力をくれることもあるだろう。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2012/03/26号、榎本 稔=榎本別ニック(東京都豊島区)理事長]

[イラスト:市原すぐる]

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