【音がくぐもって聞こえる】

風邪で喉が腫れたHさん(50歳)。しばらくして、周りの音がくぐもって聞こえ、自分の 声も頭に響くようになった。耳鼻科を受診したら「耳管狭窄症」と診断された。

耳管狭窄症とは、上咽頭と中耳をつなぐ耳管が、何らかの原因で狭窄したために、耳の閉塞感、音がくぐもる、自分の声が頭に響くなどの不快な症状が表れる病気である。悪化すると中耳炎や、軽い難聴になることもある。

耳管には、中耳内の空気圧を外気圧と等しく調整したり、中耳の分泌物を咽頭に排出したりする役割がある。しかし、耳管の入り口や内部に炎症が起きると耳管が狭まり、その働きが悪くなる。炎症の原因はこ鼻炎や上気道炎など、風邪によるものが一般的だ。生まれつき耳管が狭いなど体質的なことや、副鼻腔炎などによる鼻汁が原因となる場合もある。ストレスなどで顎関節症を患ったり、歯ぎしりや歯を食いしばったりすることの多い人も、この病気になりやすい。

耳管狭窄症かどうかは、問診や耳管通気で診断がつく。耳管通気とは、鼻から空気を挿入し、耳管を開く方法だ。耳管の機能を調べる耳管機能検査や、鼓膜の動きを測るティンパノメトリーといった装置を使うこともある。

治療で一般的なのは通気療法である。耳管通気を行うことで症状を和らげる。ほかに、耳抜き、唾の嚥下、顎を動かすなど、耳管の聞き方の指導も行う。原因が炎症によるものであれば、その炎症を抑える薬を処方することもある。炎症が治まれば、不快な症状も消えていく。また、症状があるうちは飛行機の搭乗には注意が必要だ。急激な気圧の変化を伴う離着陸時には、痛みを感じたり、急性中耳炎になったりすることもあるので、予防のためにアメやガム、飲み物を口にするなど配慮したい。

耳管開放症なら外科的治療も
耳管通気で症状が改善しない場合は、耳管が開きっばなしになる耳管開放症も疑われる。空気圧の調整ができないため、耳管狭窄症と同様の症状が表れ、呼吸吾がゴーゴーと響くこともある。また、頭を低くすると耳管の回りがむくむことで、一時的に症状が治 まるという特徴もある。

耳管開放症の原因には、耳管の形状など体質的なもののほかに、加齢が大きく関係する。耳管を動かす筋肉の衰えや、耳管回りの脂肪の減少などが原因となる。病気や急激なダイエットで痩せても、耳管開放症になりやすい。自然に治ることはないが、不快な症状は、外科的治療で改善できることが多い。鼓膜にテープを貼る、薬剤噴霧といった外来で行う簡単なものや、耳管ピンの挿入、コラーゲンの注入などの方法がある。

耳管狭窄症と耳管開放症、いずれの耳管機能障害も、すぐに重篤な病状に進行するわけではない。だが、これらの病気と似た症状を持つ突発性難聴など、早期治療が必要な病気の可能性もあるので、症状に気づいたら、早めに耳鼻咽喉科を受診するのが望ましい。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2012/03/12、野村 泰之=日本大学医学部附属板橋病院(東京都板橋区)耳鼻咽喉科外来医長]

[イラスト市原すぐる]

戻る