【肉離れを起こしたら】

Mさん(42歳)の日課はジョギングだ。初のフルマラソン出場を目指してトレーニングを強化していたところ、右ふくらはぎに肉離れを起こしてしまった。

筋肉の繊維の一部が切れて内出血を起こした状態が肉離れだ。筋肉に急激に強い力が加わり、耐えきれなくなっ たことが主な原因である。好発部位は、太ももの裏側やふくらはぎなど。サッカーやラグビーでよく見られるが、テニスやジョギングでも起こすことがある。ボールを追って素早く移動する、坂道で急に走行ピッチを上げるなど、前後の切り返しがあったり、緩急をつけたりする時に起こしやすい。

筋肉が硬くなる冬はもちろん、夏にも多い。また、最近の傾向として、運動を始めてある程度慣れてきた中高年 が、パフォーマンスを上げようとした時に肉離れを起こすケースが目立つ。

肉離れを起こすと、患部に痛みが走り、切れた部分が弛緩状態になって力が入らなくなる。その後に腫れて硬く なるのが通常の流れだ。発症後しばらくして患部が熱を持つこともある。

機能回復訓練できれいに修復
急性期の治療の基本は「RICE(Rest=安静、Ice=冷却、Compression=圧迫、Elevation=挙上)」だ。安静にし、患部を冷却して圧迫、心臓より高い位置に上げる。炎症や腫れを抑えるための処置だ。

整形外科を受診するのが望ましいが、一般の人がRICEを行う時、気をつけたいのは冷却だ。コールドスプレーで冷やすと、深部まで冷えないうえに皮膚が凍傷になることがある。バケツの水に浸したり、ビニール袋に入れた氷や市販の保冷枕をタオルに包んで当てたりした方がいい。

また、RICEをすべて行うのが難しければ、できるものだけでも構わない。ただし、RICEを行うのは最初の数日間。ある程度痛みが引いてきたら、無理のない範囲で少しずつ動かした方が筋肉はきれいに修復される。

そのタイミングや負荷の程度の見極めは、整形外科に相談するのが確実だ。できれば、理学療法士と連携して機能回復訓練をしてくれる整形外科を探したい。個々の症状に合わせたプログラムを組み、ステップを踏みながら機能回復を図ってくれるはずだ。

筋肉は、損傷が大きかったり、修復過程で負荷をかけ過ぎたりすると、切れたところが線維化しやすい。線維化 とは欠損部分をコラーゲンなどで埋めるもので、硬くて柔軟性がなく、負荷がかかった時に再びそこが切れやすくなる。そうした事態を回避するためにも、適切なプロセスで治療と機能回復を進めることが大切なのだ。

控えたいのは喫煙である。筋肉を修復する材料は血液から供給される。だが、ニコチンは血管を収縮させるため、喫煙は回復を遅くしてしまう。症状にもよるが、一般的には3週間ほどで一定程度まで回復できるだろう。ただし、復帰を焦らず、1カ月ぐらいかけてゆっくりと元のパフォーマンスに戻す方が安全だ。
(談話まとめ:繁宮 聡=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2012/02/13号、寺尾 友宏=プライマリ整形外科麻布十番クリニック(東京都港区)院長]

[イラスト:市原すぐる]

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