【笑う門には福来る】

「笑い」には、時に特別な意味が加味される。苦笑い、照れ笑い、作り笑い、など様々なものがあるが、笑うことばあらゆる動物の中で唯一人間に与えられた特権なのだろう。

社会学者の井上宏・関西大学名誉教授は、「笑い」の研究でも知られている。井上先生によれば、笑いには、4つの心理社会的作用があるという。

1つは「親和作用」。人々がお互いに笑うことにより緊張が解きほぐれ、親密感が増す。次が「誘引作用」。笑い の絶えない所には、人を集める力がある。それから「浄化作用」がある。腹立たしい時でさえも、腹を立てている自分を笑うことができれば、ストレスマネジメントの大敵である“怒り”さえもどこかに吹き飛んでしまう。最後に「解放作用」。笑うことによって心のゆとりが生じ、その結果、複眼的にモノを捉えることが可能となり、不快な“とらわれ”から解き放たれる。これらの作用は、メンタルヘルスを考えるうえでの共通点も多い。

笑いは心身の健康にも好影響
生物学的にも、笑いに関する研究報告が多く知られている。免疫システム上、大変重要なリンパ球の一種でNK細胞というものがある。笑いによって副交感神経が刺激されることにより、NK細胞が活性化され免疫力が高まるというものである。

自己の持つ免疫システムの力をしっかり発揮させれば、ガン細胞がNK細胞によって退縮するとさえ言われている。人間の体内では、毎日百万個ほどのガン細胞が生まれているという説もある。発ガンに至らないのは、こうし た免疫システムが働いていると考えられる。逆に、極めて強いストレス環境下での生活が続けば、交感神経が緊張状態となってリンパ球が減り免疫力が低下、その結果、発ガンの危険性が高まることになる。

生活習慣病と言われる肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病といったものは、一夜の暴飲暴食だけでは起こらない。悪しき生活習慣を続けることによって次第に蓄積し生じるものだ。こう考えると、ガンも発ガンに至る生活が続くことによってもたらされた生活習慣病の一種とも言える。

ストレス性疾患も同様だ。日々の生活でのストレスがうまく解消されないうちに、次のストレスが蓄積していく。まるで悪玉コレステロールがたまっていくように。こうして大きくなった悪玉ストレスの塊が脳を疲労させ、精神活動に支障を来す。

最近のテレビ番組には多くの若手お笑い芸人が登場する。また、アイドルグループたちも一昔前の格好良さだけ ではなく、笑いの要素も重視されているように感じる。国民の多くが笑いを求めていることによる自然発生的な流行だろうか、などとも考えてしまうが、身近な生活にも笑いのネタはたくさん転がっているのではないだろうか。幸いなことに、笑いには副作用がないからありがたい。

(出典、日経ビジネス、2012/01/23号、高野 知樹=神田東クリニック院長)

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