【男性の隠れ冷え】

汗っかきで体格のいいYさん(47歳)。最近受診した内科で「体が芯から冷えている」と指摘された。自覚はなく、冷えなど無縁だと思えるのだが。

「冷え性」と言うと、女性特有の症状・不調という印象が強いのか、自らを冷え性だと認める男性は少ない。だ が、男性の中にも手足が冷たい、末端が冷えていると感じている人が多いのも実情だ。このように自覚のない「隠れ冷え」こそ厄介なのだ。

体が冷えると、様々な不調を生じる。肩こりや足腰の痛みに始まり、ED(勃起障害)、薄毛、前立腺肥大症、痔といった症状も、体の冷えに起因していることが多い。いずれも血流が悪いために、末端までしっかりと血液が運ばれていないことから起こる症状だ。原因がはっきりせず、このような症状に長く悩まされているという人は、隠れ冷えを疑ってみた方がいい。うつ病やガンの患者も、体が芯から冷えているケースが数多く見られる。

体を冷やすパターンは大きく分けて3つある。1つは冷たいものを口から取り込んで「内側から冷やす」。2つ日は冷房のかけすぎや薄着による「外側から冷やす」。そして、3つ日はストレスが原因による「心の冷え=体の冷え」。過度の緊張から心の機能が低下すると、休も冷えてくるのである。

これらは我々が暮らす現代社会が生み出した負の産物と言ってもいいだろう。文明や科学が進んで生活が豊かに なり、冷蔵庫やクーラーを当たり前のように使うようになったことも冷えが増えた大きな原因だ。また、ストレスが多い社会環境が心を冷やし、休までも冷やしてしまっているのである。

さらに、意外な盲点なのが「薬による冷え」だ。痛み止めの解熱鎮痛薬や抗アレルギーで処方されるステロイド の内服薬は体を冷やす。うつ症状を改善する向精神薬にも体を冷やす成分が含まれている。こうした薬剤を長期服用することにより、体が冷えてしまっている患者も、これまで多数見てきた。

目覚めたら「冷えチェック」
それでもまだ、自分が冷えているかどうか分からないという人は、朝日覚めたら、布団の中で脇の下を手のひら で触ってみてほしい。そして、同じ手でお腹を直接触ってみる。もしも、脇の下よりもお腹が冷たいようならば、血液循環が悪くなっており、体が芯から冷えていると考えられる。まずはこのようにして、自分が冷えているかどうかを見極めてみることだ。

そのうえで冷えが疑われるという人は、@冷たい飲み物や食べ物は極力避ける、A靴下、肌着、ズボン下などを 着用する(首、手首、足首など‘首”と名のつくところを冷やさない)、B入浴時はシャワーだけでなく、湯船にしっかり浸かる、Cストレスをため込まず気分転換をすること、が肝要だ。

加齢とともに代謝や体内熱産生力が落ちるのは仕方がない。それを補うためには、日頃から「体を温め、できる だけ冷やさないようにする生活」を心がけたい。
(談話まとめ:新家 美佐子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2012/01/16号、川嶋 朗=東京女子医科大学附属青山自然医療研究所列ニック(東京都港区)所長]

[イラスト:市原すぐる]

戻る