【白内障の手術後も眼鏡なし】

かすみ日やまぷしさで物が見えにくくなったOさん(52歳)。眼科を受診すると、白内障だと言われた。手術をすることにしたが、多焦点限内レンズというものがあるらしい。

新聞の文字が読みにくい、目がかすむなど、加齢とともに気になるのが目の衰えだ。その代表とも言えるのが白 内障。目の中のレンズの役割を果たす水晶体という部分が白く濁り、光がスムーズに通過できなかったり、光が乱反射するために視力が落ちる病気だ。

70代では約半数、80代ではほぼ全員が加齢性の白内障になっていると言われるが、40代から発症することもある。物がかすんで見えたり、まぶしくて見えにくいといった症状が続くようなら、眼科を受診した方がいい。

白内障の治療では、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズに置き換える「眼内レンズ挿入術」を行う。こ れは、角膜を2〜3mm切開し、そこから専用の細い筒状の器具を入れて水晶体を砕きながら吸引して取り除き、そ の後、切開した同じ穴から眼内レンズを入れるというもの。熟練した眼科医であれば、時間にして15〜30分と、 比較的簡単な手術で、日帰りで行われることが多い。

術後は見え方の明るさも増し、くっきりと見えるようになる。以前は、視力が0.1程度まで落ちてから手術をす る人が多かったが、最近ではもっと早い段階で、仕事や趣味に支障が出たと感じた時に手術を受ける人が多い。

遠くも近くもしつかり見える
手術で劇的に視力が回復するものの、これまでの眼内レンズでは1つ課題が残っていた。それは、手術に使われるレンズが「単焦点」であるために、ある1つの距離に焦点を合わせることしかできなかった点だ。そのため、術前にどの距離に焦点を合わせるかを話し合って決めていた。つまり、道路の標識などをしっかりと見るためのレン ズにすると、手元の本などを読む場合には眼鏡を使う必要がある。

この不便さを解消するために開発されたのが「多焦点眼内レンズ」だ。このレンズを使えば、「遠く」と「近く」の2カ所にピントを合わせられるので、眼鏡などを使いたくないという人に向いている。

ただし、多焦点眼内レンズの場合、単焦点眼内レンズを使った時と同じような良好なコントラストは得られない。特に、遠くの物を見る時のコントラストが落ちるので、患者さんの中には術前に思っていたよりも見え方がぼ やける、くっきりしないと感じる人がいる。また、夜間にヘッドライトなどの光がまぶしく感じることもある。ただ、このまぶしさば、ほとんどの場合、2〜3カ月で気にならなくなる。

多焦点眼内レンズは、強い乱視がある人や、緑内障による視野障害などがあると使えないことがある。現在、多 焦点眼内レンズの白内障手術は、全国164件の医療機関では先進医療として受けられる。当院の場合の費用は、片 眼32万円に保険診療分約2万円を加えた34万円である。
(談話まとめ:武田京子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2011/12/12号、ビッセン 宮島弘子=東京歯科大学水道橋病院(東京都千代田区)眼科教授]

[イラスト:市原すぐる]

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