【山里から“健康の風”】

2007年に三井物産を退社し、名刺管理サービスなどを主軸にした三三を創業してから、心身の健康に対する意識が高まりました。コンペティティブな世界では、様々な場面で判断が求められます。心身が健全でなければ、的確な決断は下せません。

朝は6時に起床し、40〜50分かけて徒歩で通勤。週2回は筋力トレーニングを行っています。徒歩での通勤は、歩きながら考えがまとまることもあり、思考面にもいい影響をもたらしていると思います。今では夜0時を超えて酒を飲むことばほとんどありませんが、会社員時代は接待などで深夜3時頃まで飲むのが当たり前でした。移動にはすぐにタクシーを利用していたので、当時を知る人たちには、「変われば変わるものだ」と驚かれています。

また、出勤前に30分ほど、書斎で心静かな時間を持つようにしています。前日に会った人や起こった出来事を反芻し、感謝する。会社の仲間や家族に「ありがとう」という思いを持つ。起業してから会社や自分の人生により責任を感じるようになり、自然とそうすることが習慣になりました。

衛星オフィスで勤務
会社のことを「法人」というように、私は三三を1つの人格と見なしています。その三三の健康を維持するためにも、様々な取り組みを行っています。その1つが、徳島県神山町の古民家を再利用したサテライトオフィス「神山ラボ」です。

神山町は徳島市内から車で40分ほどの中山間地区で、志のあるNPO法人(特定非営利活動法人)グリーンバレーが中心となったアートによる町起こしなどで近年注目を集めています。

三三では「顧客の働き方に革新を起こす」という理念とともに、自分たちの働き方も変えていこうという使命を掲げています。三井物産で米シリコンバレー勤務だった時、自宅からテレビ会議に参加するなどエンジニアのフレキシブルな働き方を見ていて、日本でもできないものかと考えていました。

神山ラボにはインターネットの光回線が整備され、ミーティングはSkypeのビデオ通話を利用するなど、東京オフィスと遜色ない環境が整っています。自然豊かな場所で、通勤の煩わしさもない。当初はそうしたことから、生産性の向上を期待していましたが、それ以上に、会社に“健康の風”が吹き込まれるようになりました。

これまで延べ10人以上が数週間から数カ月、神山ラボで仕事をしています。その間、食事は自炊、入浴は近所の温泉を利用。休日には地域の方々と森作りのボランティアに参加するなど、田舎暮らしを体験することで、皆、元気になって帰ってきます。東京オフ ィスで働く者にも、心にゆとりが生まれているような気がします。

私も今後は、1年のうち1カ月は、神山ラボで働けたらと思っています。
(談話まとめ:田村 知子=フリーランスエディター)

[出典:日経ビジネス、2011.11.07号、寺田 親弘=三三社長]

[写真:皆木 優子]

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