【3D映像の安全な楽しみ方】

3D(3次元)テレビの購入を検討しているKさん(42歳)。「3D映像は目が疲れるのでは」という友人の青葉を聞いて、少々不安を感じている。

「3D元年」と言われた2010年以降、映画の公開をはじめ、家庭用の3Dテレビも発売され、ハードウエアも少しずつ充実してきている。今後ますます普及すると予想される3D映像。より安全・快適に楽しむために知っておくべき点についてお話ししたい。

もともと人間は、右目と左目がそれぞれ捉えた2次元視覚情報を、脳内で3Dに変換して外界を知覚している。3D映像は、この特性を利用して、右目と左目の映像を別々に提示し、仮想空間を知覚させるものである。従って、3Dメディアは人間の視覚特性にとって日常的で、自然なものだとも考えられる。

3D映像と聞くと、何かが画面から飛び出してくるイメージがあるかもしれない。しかし、3D映像の本質的な魅力は、現実感や臨場感にある。適切に制作された3D映像は、2D(2次元)映像に比べ、より日常的に知覚している風景を忠実に再現できるのだ。

3D映像視聴時の生体反応(発汗、脳機能)を我々が検証した結果では、特に発汗などの興奮状態は認められない半面、脳の視覚野や認知に関する前頭葉が強く働いていることが判明している。つまり、安全な状態で3D映像を視覚した場合、体が異常に興奮したり することはなく、脳に適度な刺激が与えられ、より現実感、臨場感の高い映像が認知できるということだ。

とはいえ、普段見ているテレビなどの2D映像と同様に、3D映像も目の疲れや眠気などを感じることは当然ある。特に、長時間の連続視聴については注意しなければならない。

覚えておきたい4つのポイント
視聴する側が注意すべき点としては、ほかに以下の4つが挙げられる。@適切な視聴距離(50インチの画面なら2m)、ディスプレーの縦径の3倍の距離を取ること、A自覚的に疲労を感じたら休憩すること、B自身の視力を眼鏡やコンタクトで正しく矯正すること(左右の視力差がない状態が好ましい)、C6歳未満の視覚発達期にある小児は視聴を控えること。

また、制作者側にも安全に視聴できる映像のガイドラインが設けられているが、現状では、これをチェックするシステムはない。今後は、制作者側がきちんとガイドラインに沿って制作した映像であるかどうかを審査する機関を整備することも必要だろう。

正しく制作された3D映像を、前述のように安全・快適な条件下で楽しむ限り、生体影響が生じる可能性は低く、医学的問題はないと考えている。ただし、左右の目の視力差や斜位など眼科的疲労素因がある場合には、眼科を受診しておくことをお勧めする。

3D映像技術は小児の弱視や斜視の矯正訓練に使う研究も進められており、今後はこうした医学面や脳科学面における活用の広がりも期待できる。
(まとめ:新家 美佐子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2011/10/31号、半田 知也[北里大学(相模原市南区)医療衛生学部視覚機能療法学]

[イラスト:市原すぐる]

戻る