【休職と職場復帰】

うつ病などメンタルヘルス(心の健康)の不調は、誰でも起こり得るものである。自分自身や周囲が早めにそれに気づき、治療を受けることが重要だが、それでも残念なことに病状の勢いが強く、休職を余儀なくされるケースはままある。

休職を必要とするケースは基本的に、ココロのエネルギーがかなり低下した状態だ。自動車で例えれば、燃料が底を突いてしまい、それ以上アクセルを踏んでも進めない状態である。このような時に無理やり頑張ってしまうことは、燃料切れの車を手で押しているのと同じこと。さらになけなしのエネルギーを使ってしまえば、当然状態は悪化する。

メンタルヘルス不調での治療の柱は、休養と服薬である。休養は、高速道路を走る車を、サービスエリアに止めてエンジンを切り、給油を行うことである。エネルギーが多少ともたまってきたと感じると、少しでも早くまた走り出したいと焦る気持ちが起こってくる。だが、ここは給油が完了するまで、エンジンをかけるのはやめておきたい。つまり、医師の指示に従って、ゆっくり心身を休めるのだ。

服薬は、エンジンの修理をして、車が円滑に走る準備を行うことである。この時期は、いかにしっかり休息できるかがポイントになる。同時に、十分な睡眠と、規則的で栄養バランスのよい食事を取る。

そうすると、心身の疲労がだんだんと薄れてくるので、その後は主治医の指導に従って、少しずつ体を動かす。暖機運転のように、エンジンはそろそろかけてもよいが、アクセルは決して踏み込まないようにする。エネルギーがまだ十分に回復していないので、焦るとまたすぐ、エネルギーが枯渇してしまう。

休養をしっかり取ることは普段から重要だが、休職中においてはより一層、意識的に心身を休める必要がある。

復職は「加速車線」から
エンジンも直り、給油も満タンになり、再びエンジンをかけて走り出す準備を行うことが、職場復帰に相当する。しばらく休んで職場に迷惑をかけてしまった、1日も早く取り返さなければ、という気持ちが強いと、復帰当初から頑張りすぎてしまう。

実際の運転を想像してみると分かるが、サービスエリアからいきなり走行車線に入ってしまうと、流れに乗れず、それこそ事故を起こしてしまう。つまり、不調が再発しやすくなる。

再び走り出す時には、本線車線を走る車の速度(ほかの同僚の仕事のペース)に惑わされず、加速車線でゆっくりとアクセルを踏み込み(軽減勤務)、安定した速度を取り戻してから、本線 (通常勤務)に入ってほしい。

職場復帰は、車の運転と同様に、「焦らず、急がず」が最も安全である。再び本線に入った後も、定期点検(受診)は必ず続け、良い状態を保っておくことも忘れずに。

[出典:日経ビジネス、2011/10/24号、吉村 靖司=神田兼クリニック副院長)]

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