【夏は意外と太りやすい】

「夏の間にお腹が出てきたんじやない?」と、妻に措摘されたKさん(38歳)。自分でも気になり、運動しなくてはと思っていたが、暑くて動くのが億劫だ。

夏と言えば、暑さで食欲が落ちる「夏痩せ」を心配する人も多いだろう。ところが近年、夏痩せよりも「夏太り」が増えている。

その一因には、生活環境が大きく影響している。夏でも空調の利いた室内で過ごせるようになり、暑すぎて食欲が落ちることが少なくなった。また、夏は炭酸系などの飲料が多く出回るが、それらは糖分も過剰だ。加えて、暑い屋外への外出を控えがちになり、運動量が減る傾向にある。仕事で外を出歩く機会が多いならまだいいが、デスクワークの人や、車での移動が多い人は、運動不足になりやすいだろう。夏以前と同じ量を食べ、消費力ロリーが少なくなれば、夏になってから太る可能性は高いと言える。

1カ月に2〜3kgくらい急激に体重が増加したり、BMI(肥満度)が25以上、あるいは腹囲が85cm以上の人は、肥満気味であることを自覚してほしい。肥満の傾向として、「それほど食べていない」つもりで、実際は過食の人がとても多い。1日の成人男性のカロリー摂取の目安は2000〜2500キロカロリー程度。まずは、自分が毎日どれくらい食べているか自覚し、食生活を見直すことが大切だ。朝・昼・晩の規則正しい3食を心がけ、間食は避けたい。晩酌を楽しむのはいいが、酒が進むと、油っぼいサイドメニューが欲しくなったり、おつまみを食べ過ぎたりしてしまうので、ほどほどに控えよう。

食事の時は、野菜を最初に多めに食べてある程度お腹を満たせば、ご飯とおかずが少量で済む。野菜も、食物繊維を含むきのこなどを多く取るのがコツだ。食物繊維はコレステロールの吸収を抑制し、排出する働きがある。糖質の吸収速度を遅らせる作用もあるため、ご飯やおかずを食べた時の急激な血糖値の上昇を緩やかにしてくれる。

夏に食生活を見直すことを怠ると、旬の食べ物が多く出回る秋、宴会の多くなる冬を迎え、ますます太りやすくなる。

「お腹ポッコリ」を見逃さない
夏太りに限らず、肥満は、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脂質異常症(高脂血症)、高血圧症、動脈硬化症などの原因になりやすい。肥満の人は、お酒を飲まなくても脂肪肝になることがあり、それが肝硬変に、やがて肝ガンになることも珍しくない。

現在は、メタポリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に焦点を当てた特定健康診査・保健指導が行われている。そこで肥満気味と言われたら、内科や専門性の高い内分泌・代謝内科で診てもらうといい。栄養指導を受けるだけでも有意義だ。

脂肪はお腹に一番つきやすい。「お腹ポッコリ」は、自分でも分かりやすいサインだろう。早めに気づき、注意することで、肥満や命にかかわる病気の発症を防いでほしい。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2011/08/22号、宮崎 滋=東京逓信病院(東京都千代田区)内分泌・代謝内科部長]

[イラスト:市原すぐる]

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