【肝炎ウィルスの検査】

父親を肝ガンで亡くしているTさん(42最)。日本には肝炎ウィルスの感染者が多いと聞き、検査を受けた方がいいかどうか迷つている。

ウィルス性肝炎は国内最大級の感染症だ。主な肝炎ウィルスは5種類確認されているが、問題になるのは慢性肝炎を引き起こすB型とC型の肝炎ウィルス。その患者・感染者は、国内で300万人を超えると推測されている。

肝炎は肝臓に炎症が起きて細胞が破壊される病気だ。肝臓は、栄養物質の合成・分解・貯蔵、アンモニアやアルコールなど有害物質の解毒、胆汁の合成などの機能を担う「人体の化学工場」。慢性ウィルス性肝炎になると徐々に肝臓の機能が損なわれ、肝硬変や肝ガンなどに移行することが多い。

肝炎ウィルスは血液を介して感染する。ウィルスで汚染された血液の輸血や血液製剤の投与、注射器・注射針の使い回しなどが主な感染経路だ(現在では献血された血液の検査や医療環境の整備により、これらが原因の感染はほとんど見られない)。入れ墨・タトゥーやピアスの穴開けで器具を共用した場合も感染の可能性がある。

B型のウィルスは、性交渉でも感染する。かつては出産時に母子間での感染も見られたが、1986年以降は母子感染予防対策が取られている。

保健所で一度検査を
様々な対策にもかかわらず感染者数が膨大なのは、感染してもすぐに発症せず、ウィルスキャリアとして長期間推移する場合があるほか、慢性肝炎になっても自覚症状がほとんどないためだ。感染に気づかず、いつの間にか病気が進行しているケースが少なくない。家族や身近な人に感染を広めている可能性もある。

病気の早期発見・治療には、感染の有無を調べる肝炎ウィルス検査が不可欠だ。厚生労働省も検査態勢の整備に取り組み、各市町村では特定年齢時に肝炎ウィルス検診を実施している。

ビジネスパーソンの場合、勤務先の健康保険によっては、健診時などに肝炎ウィルス検査を行っていることもあるが、全体としては少数にとどまっているのが現状だ。過去の健診の検査結果が手元にあったら、確認するといいだろう。その中に「HBs抗原」「HCV抗体」などの項目があれば、肝炎ウイルス検査が含まれていると考えていい。HBsはB型肝炎ウィルスの、HCVはC型肝炎ウィルスの検査だ。

逆にそれらの項目がなく、肝炎ウイルス検査を受けた記憶もなければ、ぜひ一度検査を受けてほしい。国の補助により、保健所や指定医療機関で基本的には無料で検査を受けられる。

肝炎ウィルス検査は、血液を採取して調べる。採血は短時間で済み、数日以内に結果が分かる。特に検査方法が確立された92年以前に輸血や大量の出血を伴う手術を受けた人、血液凝固因子製剤を投与された人、妊娠中や出産時に大量の出血をした女性、タトゥーやピアスの穴開け施術をした人などは、検査を受けておくと安心だ。
(談話まとめ=兼官聴=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2011/08/01号、藤岡 高弘=自衛隊中央病院(東京都世田谷区)内科]

[イラスト:市原すぐる]

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