【目の結膜が弛む】

                ある朝、鏡を見て、白目の下が弛(たる)んでいることに気づいたKさん(42歳)。驚いて眼科医を受診したところ、「結膜弛緩症」と診断された。

最近、あるメディアで紹介されてから、「結膜弛緩症」が注目されている。私のクリニックにも1日に2〜3人ほど、「結膜弛緩症ではないか」という患者が 診察に訪れている。

結膜弛緩症とは文字通り、眼球の白目部分=結膜が弛んでしまう状態を言う。元来、結膜には適度な緩みがあり、眼球の動きに耐えられるような構造になっているのだが、この緩みが普通よりひどくなり、弛んだ組織が目の縁などに寄ってしまうのが結膜弛緩症だ。主な原因はまだよく分かっていないが、加齢によるものという考え方が一般的だ。年を取ると皮膚に弛みやシワが寄るのと同じことが、結膜にも生じてしまうのである。

結膜弛緩症の症状は、ドライアイと非常によく似ている。強い痛みはあまりない。ゴロゴロする、しょぼしょぼするといった症状のほか、目が乾きやすいという人もいれば、逆にやたらと涙が出るという人もいる。このような目の不快感を主訴とする人が多い。

涙が多く出るようになるのは、弛んだ結膜のシワの間に涙がたまり、あふれ出てしまうためだ。また、結膜が弛むと結膜自体に傷がつきやすくなるので、痛みを生じる人もいるし、中には結膜下出血を起こす人もいる。

ひと目見ただけで「白目が弛んでいる」と分かったとしても、本人に不快感がなければ、治療にそれほど緊急性はない。しかし、もともとドライアイにかかっている人は、さらに目の表面に涙が行き渡らなくなるため、ドライアイが感化する恐れもあるので注意が必要だ。

治療効果がなければ手術も
結膜弛緩症と診断されたら、まずは点眼薬によりヒアルロン酸などを補い、目に潤いを与えることから始める。患者の希望があれば、涙点プラグという栓を涙小点(涙の流出口)に差し込む治療をすることもある。これは、ドライアイでもしばしば行われる治療法だ。この栓を装着することで涙が眼球表面にたまり、目の乾きを防ぐことができる。

しかし、このような治療を1〜2カ月ほど続けてもあまり効果がない場合、弛緩した結膜を切除する方法もある。15分程度で終わる、ごく簡単な手術だ。弛んだ部分をきれいに取り去るため、再発する可能性は極めて低く、術後も傷跡はばとんど残らない。何より、それまでの不快感から解放されてスッキリしたという患者が多い。

ただし、簡単とはいえ、現在のところ一般のクリニックでこのような手術を行っているところは少ないのが実情だ。症状が重いと自覚している場合には、大学病院や大きな眼科専門医院と提携していて、万が一の時にスムーズに手術を受けられる体制を取っている眼科医を探してから受診することをお勧めしたい。
(談話まとめ:新家美佐子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2011/07/18号、清澤 源弘[清澤眼科医院(東京都江東区)院長]
[イラスト:市原すぐる]

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