【健康は自然環境から】

三菱電機アメリカの社長を務めていた当時、熱帯雨林での過剰な伐採の現状を知るために、ボルネオ島のサラワクに3週間滞在しました。動物や鳥がにぎやかに暮らす森の中で寝泊まりしていた時に、自然にとっては人間が天敵であり、その人間が自然の捉を守って暮らせば環境が破壊されることもないと気づきました。自然環境が悪化した社会で、人間が元気に暮らせるはずはありません。それ以来、自然について学び続けています。

ミツパチから自然を学ぷ
私に今、自然の素晴らしさを教えてくれているのは、ミツバチです。昨年の春、東京・銀座のビルの屋上で養蜂をしているNPO法人(特定非営利活動法人)「銀座ミツパチプロジェクト」の活動を知り、現場を見に行きました。その時、「我が家でもミツバチを飼いましょう」と妻に言われたことがきっかけとなり、麻布(東京都港区)の自宅の小さな庭で、日本ミツバチを飼い始めました。

養蜂を始めてから、実に多くの発見がありました。巣箱1つ5000匹からスタートして、現在では4棟9つの巣箱に約4万匹のミツバチがいます。各棟には1匹の女王バチがいて、多くのメスの働きバチと、わずかなオスパチがコミュニティーを作っています。

女王バチは産卵、働きバチは花粉や蜜の採取、育児、巣作りなど、オスパチは女王バチとの交尾と、役割が決まっています。女王バチの寿命は平均2〜3年ほどで、ほぼ毎日卵を産み続ける生命力があるのに対し、働きバチの寿命は40日余り。オスパチは1度の交尾で絶命します。ミツバチは、こうした規律正しい社会を、数千万年前から築いています。まさに人間が目指すところの「持続社会」と言えるでしょう。

ミツバチを飼うことで、自然界の支え合いにも気づきました。例えば桜は、ハチが一度やってくると、花の中心部の色を変えて、ほかの花に誘導します。花びらにはうっすらと産毛が生えていますが、これはハチが止まった時に、滑らないようにするためのものだと思えます。そうしたことは、ハチを飼う以前には気にもしませんでした。

ハチミツは、2カ月で24kg以上採取できます。我が家で採れるハチミツは、自宅付近の桜やトチノキ、皇居周辺のユリノキなどが蜜源で、市販品より糖度が高く、味もいい。地名にちなんだ「狸穴蜜」と名づけて、親しい人たちに贈っては喜ばれています。

ハチについて話し合うことで、妻との会話がより増えました。独立した4人の子供やその家族も、遊びにくるとハチを見るのを楽しみにしています。孫のような小さな子供たちが成長した時、健康で生き生きと暮らせる社会を残したい。そのためには、1人でも多くの人が人間も自然の一部だということを意識して、自然環境に関心を払うことだと思います。
(談話まとめ:殿塚 建吾=フリーランスライター)

[出典:日経ビジネス、2011/07/11号、木内 孝=イースクエア代表取締役会長]
[写真:山田慎二]

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