【超音波で骨折治療が短縮】

休日のサッカーで足の脛(すね)を骨折したNさん(42歳)。通勤や営業にも不自由なので、早く治したいと思っていると、「超音波で治療期間が短縮できる」と聞いた。

骨折をなるべく早く治したい場合には、超音波を使う「超音波骨折治療法」がある。これは、サッカーのデビッド・ベッカム選手や、野球の松井秀喜選手といったスポーツ選手も受けた治療で、これにより試合への早期復帰が可能になった。

超音波骨折治療法とは、骨折した部分を元の正常な位置に直してギプスなどで固定した後、超音波を当てる治療法だ。医療機関から貸し出された専用の治療装置を使って、自宅で1日に約20分ほど患部に超音波を当てるだけである。照射する超音波は、通常のエコー検査で使われるのと同程度の低出力のものなので、安心していい。

このように簡単な治療法だが、効果は高い。海外の研究結果では、骨折後7日以内にギプスで固定した患部にこの治療を行った場合、治癒までの日数が従来の治療に比べて約4割短くなった。超音波なしの場合、腕の骨では98日だった治癒までの日数が61日へ、脛の骨では154日から96日へと短縮している。

物理的な刺激が治癒を早める
では、どうして超音波を照射すると、骨の治りが早まるのか。

もともと骨は、物理的な刺激で治りやすくなることが分かっていた。例えば、松葉杖を使って折れた脚を地面につかないようにして過ごすより、少し足をつけながら歩くようにした方が、治りが早い。実は超音波も、こうした機械的な刺激の1つで、それが治癒を早めると考えられる。

ただし、治療効果が見られる超音波は、1秒間に1000回の断続的なパルス状で、1万分の2秒照射後に1万分の8秒休止するというものである。このほかの周波数ではあまり効果が見られなかった。パルス状の超音波といっても、人が感じるものではないので、痛みやかゆみはない。

メカニズムはまだ詳細には解明されていない。しかし、パルス状の超音波により骨の元となる細胞からシグナルが出るようになり、骨の成長因子の分泌が高まったり、その成長因子により骨の分化が進むなど、骨の修復過程がバランスよく促されるのではないかと考えられている。

超音波治療法は、通常の骨折はもちろんのこと、一般に治りが遅い「難治性」の骨折にも有効だ。骨折した部分のずれが大きい、周辺の筋肉や靭帯などが傷ついている、糖尿病などの合併症があるほか、喫煙者などにもいい。

超音波骨折治療にかかる費用は、骨折の部位や状態によって、健康保険が利くケース、先進医療になるケース、自由診療になるケースがある。一例で言えば、四肢の単純な皮下骨折で手術を行った場合には、先進医療の対象となり、帝京大学医学部附属病院の場合には、機器の貸し出しを含めた治療費は7万円ほどだ。
(談話まとめ:武田 京子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2011/06/20号、松下 隆=帝京大学医学部(東京都板橋区)整形外科教授]
[イラスト:市原すぐる]

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