【ストレス社会から心身を守る】

現代社会が「ストレス社会」と呼ばれるようになってから久しい。読者の中でも、ストレスとは全く無縁だ、という人はきっといないだろう。

人間はもともと、ストレスにさらされた時に体の各器官の機能を調節して、ストレスに順応する力を持っている。このような調節機能は自律神経が司っており、自律神経は交感神経と副交感神経から成っている。

交感神経は、ストレスに対処する準備状態を作るために働く。右表のように血圧を上げ、心拍数を増加し、血糖値を上昇させることにより、ストレスに立ち向かえるだけのエネルギーがいつでも使える状態にする。

一方、副交感神経はストレスから解放されて休息や栄養補給を行えるように働く。交感神経とは逆に血圧を下げ、心拍数を減少させ、食べた物から栄養を十分に吸収できるようにする。消化管の運動が活発になり、消化液の分泌も増える。

人間は、置かれた状況に応じて交感神経と副交感神経のいずれかを優位に働かせて健康を保っている。

持続的な緊張は要注意
このような自律神経の働きは、感情などによっても行われる。例えば、驚惜、急性の恐怖、激しい怒りを感じた時には交感神経が、平穏、休息時には副交感神経が働く。ところが、休息時においても持続的な不安・緊張・怒りという感情が伴っていると、副交感神経だけでなく、交感神経も同時に働いてしまう。これはいわば、アクセルとブレーキが同時にかかった状態と言え、心身のバランスが非常に悪くなる。

この持続的な不安・緊張・怒りこそ、まさに現代のストレス社会で人々が抱えやすいものであり、これが続くとついには心身症やうつ病などのストレス関連疾患に至る危険性が高まる。

平日は終業後に仕事を自宅に持ち帰り、帰宅後もくつろぐことがない。休日にも仕事の ことが頭から離れない−−そんな心当たりはないだろうか。こうした生活を続けている人は要注意だ。

休息すべき時にはしっかり休んで日頃の疲れを取ったり、ストレスを解消するための趣味の時間を持ったりすることに専念しよう。「どうしても仕事のことを考えてしまう」という人は、頭から切り離そうと思いすぎると、かえってその考えが頭にこびりついてしまう。そんな時はいったんは頭に浮かぶに任せてから、「でも今は考えても仕方がない」と唱えてみてほしい。心も休も、仕事に左右されないモードに自分を置く時間を、週に1回は必ず作ろう。「できない」と思えても、よく考えてみれば「隙間時間」はあるはずだ。

ストレス社会だからこそ、上手な休息の取り方が、自分の健康を守る重要なカギになる。
[出典:日経ビジネス、2011/02/21号、吉村 靖司=神田東クリニック副院長]

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