【口臭につながるドライマウス】

最近、日常的に口の中がカラカラに乾くようになったSさん(58歳)。「口臭がきつくな つたんじやない?」と妻から言われ、気にしている。

大切なプレゼンテーションなど、緊張を強いられる場面で口の中がカラカラに乾くという経験をしたことのある人は多いだろう。だが、Sさんのように日常的にそれが続く場合は、「ドライマウス(口腔乾燥症)」と考えられる。

口の中が乾くのは、唾液が不足しているせいだ。唾液量が少ないと、口中の浄化作用や抗菌作用が低下するため、汚れや菌により口臭がきつくなる傾向がある。ひどくなると、口臭以外にも、嚥下しづらくなったり、味覚異常や痛みを伴ったりすることがある。

唾液量の低下には、唾液の蒸発が早い場合と、唾液腺からの分泌量が減る場合とがある。唾液の蒸発が早い場合は、口を開けて呼吸しているせいであることがほとんどで、就寝中に多く見られる。分泌量の減少には、唾液腺に損傷がある場合と、自律神経に問題がある場合とがある。これらは病気の一症状だったり、治療のための投薬や手術の影響だったりする。

ドライマウスを伴う病気で特に気をつけたいのが、シェーグレン症候群である。自己免疫疾患の1つで、ほかの膠原病を合併しているケースがある。糖尿病や腎疾患など全身性の病気の症状としてドライマウスになることもある。さらに、抑うつ、ストレス、心身症といった精神的なトラブルや疾患が影響することもある。

病気が関連している場合は、治療をしないと症状は改善しない。だが、治療のための薬剤が原因でドライマウスになることもある。抗ヒスタミン薬や抗高血圧薬、抗うつ薬や抗不安薬などは、ドライマウスを起こしやすい。また、加齢により咀嚼筋が衰えると、唾液量は減る傾向にある。患者さんに高齢者が多いのはそのためとも言える。

原因療法と対症療法で改善を
ドライマウスは歯科医院で問診を受け、口腔内の診察、唾液分泌検査などを行えば診断できる。原因を探るために、血液検査や病理検査、]緑撮影などが必要になることもある。その場合は、専門外来を受診するのが望ましい。

ドライマウスを根本的に治す方法はないが、原因となる病気の治療、薬の変更や減量といった原因療法や、ジェル、洗口液、スプレーなどの保湿剤、顎の運動やマッサージなどの筋機能療法といった対症療法で症状は改善される。虫歯で噛めなくなっているなら歯科治療も必須である。シューグレン症候群や放射線治療の後遺症に起因しているのなら、副交感神経を刺激して唾液分泌を促す薬を処方する。

ドライマウス自体は病気ではないが、その原因に病気が隠れていることがある。虫歯、歯周病、カンジダ症など合併症のリスクむ高まる。口中の乾きで生じる不具合や不快さがストレスとなり、ますます唾液が出にくくなって悪循環となることもある。自覚症状があれば早めに受診してほしい。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2011/01/31号、中川 洋一=鶴見大学歯学部附属病院(横浜鶴見区)ドライマウス外来主任]
[イラスト:市原すぐる}

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