【冬の肌のかゆみ対策】

Yさん(45歳)はこの数年、冬になると脇腹あたりがかゆくなり、夜中でもかきむしってしまうことがある。どのようにケアをすればいいのだろうか。

例えば東京の場合、春から秋の湿度は60〜70%だが、冬は50%前後になる。加えて、エアコンのように水蒸気が発生しない電気系の暖房器具を使用する場合、湿度は30%台になる。こうした環境下では、皮膚に備わっている防御機能が十分に働かない。そのために刺激に敏感になり、かゆみが生じる。

皮膚の防御機能を担っているのは、主に皮膚の一番外側の角質層だ。その表面は、皮脂膜という薄い膜で覆われている。皮膚の細胞と付属器(汗腺や皮脂腺)で作られた水分と脂分によってできている、弱酸性の天然のクリームである。この皮脂膜が、細菌の繁殖や水分の蒸発を防いでいる。角質層の柵胞と細胞の間はセラミドなどの細胞間脂質が埋めており、これも皮膚の乾燥を防ぐ働きをする。

ところが空気が乾燥すると、これらの防御機能が壊れ、水が干上がりひび割れた湖底のような状態になる。こうなった皮膚は刺激に弱い。衣服がこすれる、布団に入って温まるなどの刺激でも、皮膚の細胞からヒスタミンなどの化学物質が分泌されてかゆみが生じる。乾燥した皮膚では、かゆみを感知する神経が皮膚の表面近くまで伸びてくるのも、かゆみに敏感になる原因だ。

皮脂の分泌量の変化も関係する。夏より冬の方が分泌量が少なく、年齢とともに低下もする。男性に多い脂性肌の人でも、40代以降、首から下は乾燥肌に変わることが多い。また、最近は清潔志向の高まりで体臭を気にする人が増えている。そのため、入浴時に皮膚を強くこする傾向があり、それもバリア機能を損なう要因になる。

かゆみはそれ自体不快だが、皮膚のバリア機能が壊れているサインでもある。そうした皮膚は、普段の石けんやシャンプー、化粧品でもかぶれたり、ウイルスや柵菌に感染しやすくなったりする。軽く考えずに、危険信号ととらえてケアをすべきだ。

優しく洗って保湿する
ケアのポイントは2つ。入浴時の洗い方を改め、保湿することである。

まず洗い方については、硬めのタオルやナイロンタオルを使っているなら、素手もしくは柔らかいスポンジや綿の手拭いで洗う。また、強くこする洗い方を改め、優しく洗い流すといい。

保湿するには、市販のスキンケア用のローションやクリームなどを使う。含まれている保湿成分を目安に選ぶなら、10〜20%程度の尿素が入っているものがいい。尿素は、皮膚の乾燥に確実な薬効が期待できる。

オリーブオイルや椿オイル、ワセリンなどを薄く塗ってもいい。皮膚の表面に油の膜ができ、皮膚からの水分の蒸発を防ぐことができる。

室内の乾燥を避けることも大切だ。湿度が30%を切ると皮膚の乾燥が進むので、40%程度を目安にして加湿を心がけるといいだろう。
(談話まとめ:繁宮 聡=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2011/01/03号、衛藤 光=聖路加国際病院(東京都中央区)皮膚科部長]
[イラスト:市原すぐる]

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