【患者にも役立つ医療格言】

医師の世界は、職人の世界のようなところがある。患者を触って、「体の声」を聴いて経験を重ね、師匠から技を盗むようにして学ばねば、本当の臨床力は身につかない。教科書だけ読んでいてもダメなのだ。私が医師になりたての頃、上級医から診療に役立つたくさんの格言を教えられた。その中から、患者にも役に立つ格言を紹介したい。

「大物は診療終了間際にやってくる」
診療時間終了間際に飛び込んでくる患者の中には、重症な疾患が隠れていることが多い。実際に、そうした患者 に対してこの言葉を思い出し、慎重に診察や検査をしたところ、動脈癌の破裂、重症胆のう炎、心筋梗塞などを見 逃さずに済んだことがある。

逆に患者側から考えれば、診察時間内に余裕を持って病院に行くようにするといいと言い換えられる。遅い時間 に行って必要な検査をしてもらえなかったり、我慢しすぎて手遅れになったりすることがないよう注意したい。

「突発する頭痛は、脳出血を疑え」
自分で歩いて来院した患者が、頭痛が突発したということで頭部CT(コンピューター断層撮影装置)画像を撮り、 くも膜下出血を診断できたことがある。バットで殴られるような突然の痛みは、くも膜下出血などを疑い、すぐ に受診することをお勧めする。

「メタポリック症候群患者の『胃が痛む』は、心筋梗塞かもしれない」
高血圧、高脂血症、糖尿病などを併せ持つ患者の胃の痛みは、心筋梗塞のことがある。心臓の下壁の痛みが、み ぞおちに放散するからだ。締めつけられるようなみぞおちの痛みが出たら、心電図をチェックしてもらいたい。

「長引く咳は心不全のことがある」
他院で気管支喘息だと言われ、治療していても治らないと受診しに来る患者に多いのが、心不全である。慢性心不 全では肺が鬱血し肺水腫になるので、咳が長引く。咳が続く人は、足にむくみがないかチェックしたり、心臓拡大 がないか病院でレントゲンを撮ってもらったりするといいだろう。

「意識のない患者は『アイウエオチップス』で原因を考える」
家族などが意識を失って倒れた時は、「アイウエオチップス」と心の中で唱えて原因を探ってみよう(図参照)。

このような医療格言が患者に伝わることはなかなかない。私は1カ月に2000人の患者を外来で診療しながら、メディアなどを通じて健康の大切さや有益な健康情報を一般の方に伝えるエバンジェリスト(伝道者)として活動している。これまでの連載が、読者の皆様の健康の一助となっていれば幸いである。

  [出典:日経ビジネス、2010/12/27号、江田 証=江田クリニック院長]

「熱血Dr.の診療日誌」は今国で終了いたします。

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