【繰り返すこむら返り】

最近、睡眠中の早朝や歩いている時などに、度々こむら返りが起こる丁さん(39蔵)。同僚に話すと、「何か病気のサインかもしれませんよ」と言われ、気になっている。

こむら返りとは、痛みを伴う筋肉の痙攣のことである。主に足の腓腹筋(ふくらはぎ)に起こることが多く、こぶら返りとも言う。

こむら返りは、誰もが一度は経験したことがあるであろう、ごく一般的な症状だ。しかし、どのようなメカニズムで起こるのか、その詳細については実はまだよく分かってはいない。それでも、筋肉に原因があって起こる場合と、神経に原因があって起こる場合があると考えられる。

筋肉に原因がある時には、筋肉自体の過敏性が高まり痙攣を起こす。神経に原因がある時には、何らかの障害を受けた神経が、筋肉に異常な信号を送り、その結果として筋肉が過度に収縮して起こるようだ。

こむら返りには、一過性のものと、繰り返し起こるものがある。多くの人が経験するのは、運動時などに起こす一過性のものだろう。これは、筋肉の疲労により老廃物がたまったり、大量に発汗したりして、血液中のナトリウムやカルシウムなどの電解質のバランスが崩れることで、筋肉が過度に緊張して起こる。

大量に飲酒した時や、下痢、熱中症になった時などでも、体内の電解質のバランスが崩れるので、こむら返りを起こすことがある。血行不良もこむら返りのきっかけになり得る。冷たい水の中で水泳をしたり、寒い中でランニングをしたり、長時間同じ体勢でいたりする時にこむら返りを起こすのはこのためだ。

こうした単発的に起こるこむら返りを防ぐためには、運動前の十分なストレッチや水分補給、運動後のクールダウンが大切だ。特に、冬場のゴルフなどでは、冷えによる血行不良と筋肉疲労でこむら返りを起こしやすい。準備運動を欠かさずに行ってほしい。

糖尿病のサインの可能性も
Tさんのように、こむら返りを繰り返し起こすようになった場合には注意が必要だ。こむら返りは思わぬ病気のサインの可能性もあるからだ。週に数回こむら返りを起こし、特に就寝中などの安静時に発症するようなら、医療機関を受診しておきたい。

サインとなる疾病の1つが糖尿病だ。糖尿病患者の4剖近くにこむら返りが起きていたという報告がある。また、背骨にある脊柱管が狭くなり、神経を圧迫する脊柱菅狭窄症や椎間板ヘルニアでも、こむら返りを起こすことが多い。こむら返りがあり、腰に違和感を覚えるようなら、整形外科を受診するといいだろう。

このほか、甲状腺機能異常や薬の副作用のサインになることもある。高血圧の治療薬や利尿剤などを服用していて、こむら返りを起こす場合には、主治医に相談してほしい。

こむら返りには、膝の関節を真っすぐにした状態で足全体を伸ばしたり、つま先を甲側に引っ張るなどの筋肉のストレッチが効く。ストレッチはこむら返りの症状を改善するだけでなく、予防効果もあるので、運動前や就寝前に行っておくといい。また、マッサージで血行を良くするのも効果的だ。

こむら返りに有効な薬が、漢方薬の芍薬甘草湯である。即効性があり、服用後10〜20分で効果が表れるという報告がある。予防的にも使えるので、ゴルフなどの運動前や、就寝前などに服用しておくと、運動後や明け方のこむら返りを防げる。芍薬甘草湯の作用機序は明らかではないが、芍薬の筋肉を弛緩させる作用と、甘草の血行を改善し炎症を抑える作用による効果だと考えられる。

ただし、甘草を多量に長期間連用すると、血中のカリウム濃度が下がるため、偽アルドステロン症という副作用が出る恐れがある。服用する場合は、医師の指示に従ってほしい。
(談話まとめ:武田 京子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/12/13号、稲木 一元=青山稲木クリニック(東京都港区)院長]
[イラスト:市原すぐる]

戻る