【コレステロール値に新指標】

健診でLDLコレステロール値が高いことに気づいたWさん(46蔵)。医師に相談すると、「HDLコレステロール値とのバランスが大切」と指導された。

今年の健康診断の結果はいかがだったろうか。健康診断の主な目的には、ガンなどの早期発見、心疾患・脳血管疾患の羅患率や死亡率を減少させることなどがある。心疾患・脳疾患に大きく関わってくるのが「脂質異常症」。以前は「高脂血症」と呼ばれていた生活習慣病の1つだ。血液中のLDLコレステロール(悪玉)やトリグリセライド(中性脂肪)が多すぎたり、HDLコレステロール(善玉)が少なすぎたりする病気で、これを防ぐには、コレステロール値の管理が重要なポイントとなる。

このコレステロール値だが、「単にLDLコレステロールが少なければいい」というものではない。コレステロールと聞くと、とかく“悪者”にされがちだが、本来コレステロールには、細胞膜を作ったり、体内ホルモンの原材料になるなど、とても重要な働きがある。「ただ減らせばいい」という考え方は間違っている。

最近の研究では、LDLコレステロール値を管理したうえで、HDLコレステロール値にも注意を払い、双方の比率を低くすることが重要だとされている。つまり、LDLコレステロール値をHDLコレステロール値で割って算出される数値、LH比が重要だということになる。

LH比は、私見では2.5未満が望ましいと考える。しかし、ほかの研究者や医師によっては2.0以下を目標値としている人もいて、現在のところ若干の幅がある。さらに、心筋梗塞や糖尿病、高血圧と診断を受けている人などは、1.5以下が目標値とも言われている。 ご自身のLH比を割り出してみたら、適正かどうか、主治医や産業医などに尋ねてみるといいだろう。

毎年1度は健診でチェックを
そもそも、LDLコレステロールと、HDLコレステロールには、その働きに大きな違いがある。いわゆる悪玉と呼ばれているLDLコレステロールは全身にコレステロールを運ぶ役割をしており、一方の善玉と呼ばれるHDLコレステロールは、全身の余分なコレステロールを回収する役割を果たしている。従って、LDLコレステロールだけが増えすぎてしまったり、HDLコレステロールだけが減りすぎてしまったりすると、血管の壁にコレステロールが蓄積されていく。

このように、血管の壁にへばりついたコレステロールがプラークとなり、血管を狭くして、血液の流れを阻害するようになる。これが動脈硬化だ。動脈硬化が、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞のリスクを高めることはご存じだろう。コレステロールが悪者扱いされるゆえんはここにある。しかし、前述したように、コレステロール値を管理するうえで、LDLコレステロールとHDLコレステロール双方のバランスを示すLH比が大切だと心得てほしい。

実際、LH比が低くなればなるほど、動脈硬化になりにくいという研究結果も出ている。日本人の死因の約3割が動脈硬化を基盤とする心疾患や脳血管疾患であることを考えると、LH比でコレステロール値を管理していくことの重要性が分かるだろう。

とはいえ、コレステロール値は自分では測定できない。だからこそ、企業や市町村などが行う健康診断を最低でも年に1度は受けていただきたい。しかし、働き盛りの40〜50代の男性でさえも受診率は100%に満たない。女性ではさらにその割合は下がる。人間ドック受診に至っては、男女合わせて 1割未満という調査結果もある。これは、非常に残念なことだ。

健診を受けた人は、結果を基に1度ご自身のLH比を算出してみてほしい。サイレントキラーと呼ばれる動脈硬化から身を守るためには、その数値が1つの目安となるからだ。
(談話まとめ:新家 美佐子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/11/29号、山門 實[三井記念病院総合健診センター(東京都千代田区)所長]
[イラスト:市原すぐる]

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