【花粉症改善の要は初期療法】

毎年、花粉症に悩まされるMさん(45歳)。少しでも症状を軽くしようと、「花粉症にいい」とされるものをあれこれ試しているが、最善の治療法はないものか。

毎年、スギ花粉の飛散時期になると、多くの患者さんがくしゃみ、鼻水(鼻汁)、鼻づまり(鼻閉)といった鼻症状、涙目や日のかゆみなどの眼症状を訴える。

2011年の春は花粉症患者さんにとって、例年以上に煩わしい季節になりそうだ。スギ花粉は雄花の中で成長し、7月から8月にかけての気温が高いと花粉がたくさん作られる。今年の夏は猛暑が続いたため、来春は、大量の花粉が飛散すると考えられる。また、2009年の夏は長梅雨の影響などでス ギの発育に良い条件が揃わず、今春のスギ花粉量は比較的少なかった。しかし、花粉飛散量が少なかった翌年は、飛散量が増すことが分かっている。

花粉症の改善に最も効果的と考えられているのは、1月末から2月にかけての花粉飛散開始時期に合わせて、あるいは症状が出始めた時から治療を開始する初期療法だ。初期療法は第2世代抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬などの内服薬を中心に行われる。

花粉症に用いられる薬剤にはそれぞれ特徴がある。第2世代抗ヒスタミン薬は鼻汁やくしゃみに効果が高く、即効性がある。かつて抗ヒスタミン薬は眠気の副作用が強かったが、第2世代抗ヒスタミン薬では改善されている。抗ロイコトリエン薬は鼻閉に効果的だが、薬が十分効くまでに数日かかる。

飲み薬のはかによく使われるのがステロイドの鼻噴霧薬である。鼻閉だけでなく鼻汁やくしゃみにも効果的で安全性も高い。症状が強い時だけ使うのではなく、毎日定期的に使用することが大切だ。花粉症治療の目的は、少しでも重症化を抑制して症状を改善し患者さんのQOL(生活の質)を向上させることである。受診の際にはどのような症状がつらいのかを医師に伝えて、適切な薬剤を処方してもらうことが肝心だ。

将来的には免疫療法が有望
近年では免疫療法が注目されている。花粉の抽出液を皮下注射して、花粉抗原に対する免疫を獲得させる方法である。注射の際は、花粉の抽出液の濃度を下げて薄くしたものから始めて、その後少しずつ濃度を上げていく。有効例では10年以上効果が持続する。

問題は、治療期間が長いこと、効果が見られない人も2〜3割いるほか、現在行われている皮下注射での投与では頻繁な通院が必要なこと。また、まれに喘息症状などの重い副作用が見られることもある。有効な治療法ではあるが、治療を希望する際に十分な説明を受け、治療内容をよく理解する必要がある。

花粉の抽出液を口に含み、粘膜を介して投与する負担が少ない方法の開発も進んでいる。舌下免疫治療と言われるもので、毎日スプレーで舌の裏に投与する。効果が確認されれば、3年後ぐらいには保険診療での治療が可能になると期待されている。

医療機関での治療法以外に、甜茶、乳酸菌、アロマセラピーなどの代替医療を実践している人も多い。全国調査では2割程度の人が何らかの代替医療を利用していた。そのうち30%前後の人が効果を自覚していたが、実際には効果が無い偽薬を使用しても30%程度の人に効果は見られるとされており、代替医療の実際の有効性は明らかにはなっていない。効果を持つ可能性が全く否定されるものではなく、安全で費用も安いものならば代替医療も問題はないと考えられるが、科学的に評価されている医療機関での医療をないがしろにしてはならないだろう。

花粉の飛散量が多いことが危惧される2011年のシーズンは、初めて花粉症を発症する人も少なくないと思われる。早期の受診と治療の開始が肝要だ。また、毎年花粉症に悩んでいる人には、特に初期療法をお勧めする。
(談話まとめ:田野井 真緒=医学ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/11/22号、岡本 美孝=千葉大学大学院(千葉市中央区)医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学教授]
[イラスト:市原すくる]

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