【禁煙で寿命を取り戻す】

メーカー勤務のCさん(36歳)が、今度こそ禁煙したいと当クリニックの禁煙外来に訪れた。たばこの値上げで、限られた小遣いからの出費も厳しくなったとのことだった。

たばこの煙に含まれるニコチンには、コカインなど麻薬と同等の依存性があることが証明されている。「ニコチン依存症」という病名もあるほどだ。また、たばこの煙は4000種類以上の化学物質を含有している。その中には60種類の発ガン物質が存在する。殺虫剤に含まれるヒ素、車のバッテリーに含まれるカドミウム、排出ガスに含まれる一酸化炭素などだ。

また、喫煙者は非喫煙者と比較して3倍以上メタポリック(内臓脂肪)症候群になりやすい。喫煙しながら運動しても、運動効果が減ってしまうことも分かっている。心筋梗塞や脳梗塞など血管の病気になりやすいだけでなく、認知症になるリスクも高まる。

寿命と喫煙の関係では、喫煙を続けると、寿命が10年短くなると言われている。35歳の人が70歳まで生きている割合は、非喫煙者が81%に対し、喫煙者では58%と有意な差が見られる。ただし、若いうちに禁煙すればするほど寿命を取り戻せるという統計がある(表参照)。

禁煙すると、数日で味覚や嗅覚が鋭敏になってくる。食べ物がおいしく感じられる一方で、太るのを心配する人もいるが、禁煙後にダイエツトをしていけばよい。また例えば、1日1箱喫煙していた人がたばこ代を貯金すれば、1年間で10万円以上にもなる。

失敗を繰り返す人は禁煙外来へ
自分の意思の力だけでは、禁煙で失敗を繰り返す人もいる。その場合は、禁煙外来などを受診するといい。効果的な禁煙補助薬を処方してもらえる。

ニコチン依存症では、たばこを吸うとニコチンが血液に入り、すぐに脳にあるニコチン受容体に結合する。ニコチンが脳のニコチン受容体に結合すると、快感をもたらすドーパミンという物質が脳から放出される。その快感が依存症のもとになっているのだ。

禁煙補助薬の「チヤンピックス」は、ニコチンの代わりに脳のニコチン受容体に結合して、快感を生むドーパミンを出すため、たばこ切れのいらいら感を軽減する。また、ニコチンがニコチン受容体に結合するのを阻害することで、一服してしまった時、たばこがうまいという満足感が減り、喫煙したいという気持ちもなくなってくる。

なお、禁煙外来での保険適用には「1日の平均喫煙本数×喫煙年数が200以上」などの要件に加え、ニコチン依存症を判定する「TDSテスト」の得点が5点以上を満たす必要がある。同テストは当クリニックのホームページにも掲載している(http://www.edaclinic.com/menu30.html)。

健康保険が適用されると計12週間この薬を飲みながら、5回の診察を受ける。私の患者さんでの禁煙成功率は8割とかなり高率だ。ぜひ一度、医師に相談してみてほしい。

[出典:日経ビジネス、2010/10/25号、江田 証=江田クリニック院長]

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