【聴診器でセルフチェック】

部長職のCさん(54歳)から「親戚に脳梗塞や心筋梗塞などの血管の病気の人が多く、自分も心配だ」との相談を受けた。脳梗塞や心筋梗塞をセルフチェックできる方法がある。医師が使用している聴診器で「体の声」を聴くことだ。聴診器はレントゲンのように被曝の心配もなく、非常に多くの体の情報が得られる。医療従事者だけでなく、誰にでも簡単に使うことができる。

聴診器を当ててチェックしたい部位は、@首、A胸の上部(肺)、B左胸(心臓)、C腹部の4つだ。

こんな音が聴こえたら要注意
@首の両側の血管に聴診器を当てて、血管が細くなって詰まりかけている時に聞こえる「シュー、シュー」という音がしないか確認する。首の血管(内頸動脈)が動脈硬化で詰まり、脳梗塞を起こす患者が増えている。セルフチェックで狭窄が早期に発見できれば、血栓内膜剥離術という手術で脳梗塞を防げる。

A両胸の乳首の少し上に聴診器を当て、大きく呼吸をして、肺の音を聴いてみる。秋になると、喘息の発作を起こす人が増える。喘息発作では、息を吸った時には「ヒューヒュー」という高い音、息を吐き終わる時には「ブーブー」という独特の低い音が聴こえる。普段から肺のおとを聴いておけば、咳が出た時にただの風邪なのか、喘息発作なのかが大まかに分かるようになる。

心不全を起こしている患者は、肺水腫と言って、肺が水浸しの状態になっている。呼吸をした時に、水が「ボコボコ」とするような書が聴こえたら、すぐ医師に受診することが重要だ。また、たばこ病とも呼ばれる肺気腫になると肺が膨張するため、肺の音が遠くに感じるなど聴こえづらくなる。

B心臓の音は、左の乳首付近に聴診器を当てて聴き、リズムを覚えておく。鼓動のリズムが乱れていることが分かるだけでも、医師に受診するタイミングを逃さずに済む。

鼓動のリズムが不整な人の中には、心房細動の人がいる。鼓動のリズムが乱れると、心臓内で血液の流れが淀んで血栓ができやすい。それが脳に飛び、血管を詰まらせてしまうことで、脳梗塞を作る危険がある。心房細動が疑われる場合は、早急に医師に相談してほしい。

C腹部はへその辺りに聴診器を当てて10秒以上聴く。普段から腸の音に親しんでいると、腸が詰まったり、ねじれたりする腸閉塞の時に聞こえる金属性雑音(遠くでキン、キンと金属の管を叩いたような音)などの異変に気づける。何より、聴診器で体の声を聴いていると、自分との対話ができて、心が落ち着くようになると思う。

聴診器はネットショップなどで入手できる。数千円の安価なものでも十分聴こえる。早速Cさんも聴診器を手に入れ、自分の体の声を静かに聴く貴重な時間を持つようになった。

[出典:日経ビジネス、2010/09/27号、江由 証=江田クリニック院長]江由 証=江田クリニック院長]

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