【背骨の執帯が骨化する病】

ひどい肩こりと腕のしぴれで整形外科を受珍したGさん(58蔵)。「後縦靭帯甘化症」という難病指定の病気と診断され、ショックを受けている。

一般的に背骨と称される脊椎は、部位によって上から順に、頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎と呼ばれ、たくさんの骨が縦に連なり形成されている。これらの骨を支える役目を果たしているのが靭帯であり、中でも人体を正面から見た時、背骨の後方を縦走する靭帯を後縦靭帯と呼ぶ。この後縦靭帯が骨化して、様々な症状を起こすのが「後縦靭帯骨化症」である。この病気は、骨化した部位によって、頚椎後縦靭帯骨化症、胸椎後縦靭帯骨化症、腰椎後縦靭帯骨化症と分類される。

ひどい肩こりや首の痛み、手指や腕、足のしびれなどを訴えて受診される患者さんの中には、レントゲンやCT(コンピューター断層撮影装置)撮影の結果、後縦靭帯骨化症と診断がつく人もいる。この病気は厚生労働省で難病と指定きれる特定疾患になっているが、その症状の重さは人によって違い、重篤な症状の人はそれほど多くはない。発症の割合は女性よりも男性の方が約2倍多く、50代から徐々に患者数が増えていく。東洋人、特に日本人に患者が多いことも特徴の1つだ。

靭帯が骨化する明確な原因はまだ明らかになっていないが、糖尿病、代謝異常、肥満体質の人などがかかりやすく、遺伝的な体質が関係していることが分かってきている。しかし、遺伝と言っても、発症率が高まるだけであって、必ず遺伝するわけではない。また、後縦靭帯が骨化していても、痛みやしびれなど日常生活に支障を来すような症状が出る人もいれば、一生症状の出ない人もいる。

症状がひどくなれば手術も検討
この病気は、骨化した靭帯が、脊椎にある脊柱菅を圧迫することで脊柱菅が狭窄し、脊柱菅の中を通る神経が圧迫されたり損傷したりすることで症状が顕在化する。そのため、骨化した靭帯が脊柱管を圧迫していても、脊柱管の太さに余裕があり、神経が圧迫されていなければ、症状が出ないこともある。つまり症状の重さは、神経の圧迫や損傷具合に関わっており、骨化の程度がひどくなくても、神経を大きく損傷することになれば、症状は重くなる。

脊柱菅の中を通る神経が圧迫、損傷されることで症状が出る病気には、ほかに椎間板ヘルニアや脊柱菅狭窄症などがある。後縦靭帯骨化症の症状は、これらの病気と同じものとなる。

後縦靭帯の骨化は突然起こるわけではなく、徐々に進行していく。その進行具合は人によって異なり、また、骨化している靭帯の部位によって症状も変わる。初期の段階では、首や肩に鈍痛を感じたり、指先や足にしびれを感じたりする。その症状が進行すると、手先を使った細かい作業や歩行に困難が生じ、神経の損傷がひどくなれば、排尿や排便に障害が生じるなど、日常生活に介助が必要になってくる。

治療には、保存的治療と手術治療とがある。保存的治療では、痛みを軽減するために、消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などを投与する。また、神経への圧迫を減らすために、首の動きを制限する頚椎カラーといった装具を使用することもある。このような保存的治療を行っても、症状が進行する場合は、神経への圧迫を取り除く外科的手術を行う。

手術は、日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医のいる医療機関で受けるのが望ましい。当院でも手術が必要となった患者さんには、そのような病院を紹介している。手術する部位によっても違うが、入院は10日から1カ月を要し、長期間仕事を休まなければならなくなる。

症状が出てから、神経の損傷が回復不能となるまで長く放置してしまうと、手術をしても改善しない場合もある。ひどい肩こりや手足のしびれを感じたら、症状が軽いうちに、早めに整形外科を受診してほしい。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/09/27号、寺尾 友宏=プライマリ整形外科麻布十蕃クリニック(東京都港区)院長]
[イラスト:市原すぐる]

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