【山歩きで英気を養う】

釣りや酒をこよなく愛し、関連する作品も多く遺した作家の故開高健さんに傾倒して、渓流釣りを長年の趣味としてきました。しかし、岩場から4m滑落したのを機に、8年はど前からは山歩きに転向しました。

週末に休めれば日帰りで、奥多摩や秩父、奥武蔵などの東京近郊の渓谷を歩いています。何日か休みが取れる時には泊まりがけで、信州方面に足を運びます。ここ数年は、1年に1回以上は標高2000m級の山を歩くことを目標にしていて、一昨年は栂池(つがいけ)高原に八方尾根、昨年は乗鞍岳、今年8月には志賀高原を歩きました。この秋には駒ヶ岳へ行ってみたいと思っています。

山では鳥のさえずりや川のせせらぎ、滝の音などに耳を澄ましながら、マイペースで歩いていきます。距離にすると、勾配のあるところなら15km程度、なだらかなところなら20km以上は歩くでしょうか。自然の中に身を置くと、心身がリフレッシュできます。四季折々で違った表情が楽しめるの も、山の大きな魅力ですね。

山へ出かける時には、リュックサックに必ずスケッチブックとビールや白ワインのボトルを用意していきます。カメラは持っていきません。写真を撮ると、それで安心してしまうような気がするのです。自分の目でしっかりと景色を見て、感じる。自分の手で絵に描いて、記憶に残す。それが大切だと思っています。

歩きながら疲れたり、景色のいいところがあったりしたら一休み。弁当を食べ、渓流で冷やした酒でのどを潤しつつ、スケッチブックを広げます。山で飲む酒は格別で、絵を描く筆も気持ちよく進みます。運動をする時に酒を飲むのは、本当は好ましくないかもしれません。でも、私にとっては汗をかいた後に酒を飲むことも楽しみの1つですから、絶対に外せません(笑)。酒好きも、開高さんの影響ですね。

好きなことを薬しく続ける
絵は自分で描くだけでなく、鑑賞もします。特に印象派のクロード・モネとマルク・シヤガールが好きで、今年は国立新美術館で開催された「オルセ−美術館展」や、東京芸術大学大学美術館で開催中の「シヤガールーロシア・アヴァンギャルドとの出会い」も見に行きました。彼らの美しい作品はもちろんですが、晩年になっても描き続けたエネルギーに圧倒され、尊敬しています。山でのスケッチはもっぱら水彩画ですが、今後は油彩も描いていきたいと思っています。

山歩きも続けていきたいですね。そのための持久力をつけようと、スポーツジムで水泳もしています。山を歩いたり、絵を描いたり鑑賞したりと、好きなことをすることで、楽しく生き生きと輝ける。仕事にもいい影響を与えてくれると思います。そんなふうに、好奇心を持ち続けることが、何よりの元気の秘訣ではないでしょうか。
(談話まとめ:田村知子=フリーランスエディター)

[出典:日経ビジネス、2010/09/20号、村田誉之=大成建設ハウジング社長]
[写真:皆木 優子]

村田誉之(むらた・よしゆき)氏
1954年生まれ。77年東京大学工学部建築学科卒業後、大成建設入社。東京支店工事長・建築部部長、住宅事業本部副本部長などを経て、2008年10月大成建設ハウジング副社長に就任。2009年4月から現職。

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