【五十肩で脱が上がらない】

Kさん(45歳)はゴルフの翌日に有が痛み、脱が上がらなくなった。妻には「五十肩じやないの?」と言われたが、どのように治療すればいいのだろう。

肩関節は、肘、膝などほかの関節に比べて複雑な構造をしており、上下左右、回転と多様な動き方ができる。それを可能にしているのは、関節内の深層筋(インナーマッスル)、骨同士をつなぐ靭帯、骨と筋肉をつなぐ腱、関節を覆う関節包などの軟部組織だ。これら伸縮性・柔軟性に富んだ軟部組織が補助しているため、肩関節は広い可動域を持ち、多様な動き方ができる。

この肩関節の軟部組織に変性が生じ、腕の可動域が縮小して動きが制限される症状を総称して肩関節周囲炎と言う。一般には五十肩とも呼ばれている。ある日突然、腕を動かそうとすると激しい痛みが生じて動かせなくなる。強い痛みはおおむね数日で治まるが、腕の動きが制限される状態は続 く。程度は人それぞれで、ズボンの後ろのポケットにも手が届かないという場合もあれば、日常生活に支障はないが、高い棚に手を伸ばすと痛みが走るなどという場合もある。主に40代から50代頃に多く見られるのも特徴だ。

五十肩については誤解が多い。肩の酷使で炎症が起きると思われがちだが、そうではない。関節鏡(内視鏡)により採取した組織の顕微鏡検査で確認できるのは、「血管が増える」「神経の枝分かれが増え痛みに過敏になる」「軟部組織の柔軟性が低下する」という、3点の変化である。そうした長年の変化の蓄積が、たまたま現れたのが五十肩なのだ。

軟部組織の変性の原因は、よく分かっていない。肩の酷使が痛みのきっかけにはなるが、それは痛みを自覚したきっかけであって、変性の直接の原因ではない。加齢の影響とも考えられがちだが、五十肩との因果関係は確認されていない。五十肩の組織のサンプルを多数採取することは現実的に困難であり、解剖学的・病理学的に原因を解明することは難しい。

温めて動かし、可動域を広げる
ただ確かなことは、そのままにしておくと、さらに伸縮性・柔軟性が失われ、症状が長期化するということだ。五十肩は自然治癒すると言われることがある。1カ月から1年半ほどの幅はあるが、自然に治ったという人がいるのも事実だ。しかし、そういう人を診察すると、強い痛みはないものの、腕の動きに制限がある状態は変わっていない。つまり、治療をしなければ、可動域の縮小が固定されるのである。

肩に痛みを感じたら、早めに整形外科を受診すべきだ。肩の痛みと可動域の縮小を伴う病気はほかにもあり、専門医が判別する必要がある。

その結果、五十肩と診断された場合は、温めることで血行を促し、関節可動域訓練を行うのが最良の治療法だ。症状に応じて湿布薬や塗り薬も処方されるが、これらは痛み止めであって、可動域の縮小を根本的に治すものではない。痛みがあっても早い段階から意識的に腕を動かすほど、早期の治癒が期待できる。

具体的には、壁の前に立ち、痛みのある側の手を壁について、ゆっくり膝を曲げていく。深くしゃがむにつれて腕が上がった状態になる。痛みを感じたら、そのまま30秒から1分程度静止してみる。これを繰り返すことで、狭まっていた可動域が少しずつ広がっていく。この関節可動域訓練を最低1日1回行う。入浴後に行えば、患部が温まっているのでさらに効果的だ。

五十肩は再発することもある。同じ側の肩が繰り返すことは少ないが、反対側が五十肩になるケースは時折見受けられる。それを防ぐには、日頃から関節を動かすようにすることだ。関節は動かさないと可動域が狭くなり硬くなる。五十肩を経験していない人も含め、仕事の合間や家庭で柔軟体操やストレッチを行って、関節を軟らかく保つように心がけるといいだろう。
(談話まとめ:繁宮 聡=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/09/20号、星川 吉光=聖路加国際病院(東京都中央区)整形外科部長]
[イラスト:市原すぐる]

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