【不快な口内トラブル】

納期に向けて残業続きのシステムエンジニアのWさん(39歳)。口内炎ができて痛み食事を楽しむことができない。病院に行こうか治るのを待つか迷っている。

口の中で、違和感や痛みのある“出来物”が舌に触る。食事の時、その出来物に食べ物が当たると痛い、水分を取るとしみる。こんな経験は、誰もが一度はあるのではないだろうか。

一言で「口内炎」と言っても実際には、細菌性やウイルス性、そのほかいろいろな種類がある。中でも最も多く発症して一般的なのがアフタ性口内炎だ。表面が白っぽくくぼみがあり、回りが赤い円形または楕円形の浅い潰瘍で、痛みを伴って1個から数個発生する。舌や頬、歯ぐきにできやすい。特に、舌にできると敏感なので痛みを感じやすくやっかいだ。しかし通常は1〜2週間で治ってしまうので、それほど心配する必要はない。

アフタ性口内炎の原因は、歯ブラシなど硬いものが当たるほか、誤って歯で粘膜を噛んでしまうなどの物理的刺激によって起こる局所的なものと、疲れて体の免疫力が低下しているような時にできやすくなるものがある。ストレスや疲労、睡眠不足など全身的な原因によるものもある。

口内炎になってしまったら、しょうゆや香辛料、酒、たばこなどの刺激物はなるべく控えること。ビタミンBには粘膜の修復作用があり、細菌に対する抵抗力も高い。レバー、豚肉、乳製品、大豆などビタミンBを多く含む食材を食べることを心がけたい。食事の時、誤っていつも同じ場所の粘膜を噛んでしまうなら、咀嚼に気をつける。夜の酒のつき合いが続けば、寝不足になるうえ、酒が患部を刺激して治りにくくなるのではどほどにしよう。

痛みが強いと、つい歯磨きがおろそかになって口の中の清潔が保てず、口臭の原因となりやすい。歯ブラシを柔らかめに変えたり、洗口液を活用したりするなどしてケアすることも1つの方法だ。

早めに受珍した方がいい場合も
2週間ぐらいしても口内炎が治らない、痛みで満足に食事ができないなど生活に支障が出てくるようなら、かかりつけの歯科か内科で診てもらうといいだろう。アフタ性口内炎では多くの場合は診てすぐに診断がつき、薬を処方される。

代表的な治療は、殺菌・消毒作用のあるうがい薬で口腔内を清潔にしてから、副腎皮質ステロイド 剤が含まれた口腔用軟膏を患部に塗る、錠剤を患部に貼付するなどの局所療法を主体に行う。そのほか、患部を焼いてしまうレーザー治療を取り入れている病院もある。適切な治療を受ければ、通常1週間くらいで完治する。

口内炎は、どちらかというと軽く見られがちな病変だ。本当に単なるアフタ性口内炎なら深刻になることはないが、難病に指定されているベーチェット病の症状の1つとして、口内炎になることがある。帯状疱疹ウイルスによる口内炎や天疱瘡といった水疱性疾患の場合には、食事を取ることもままならず早期の治療が必要な場合もある。口内炎と思っていたら、舌や歯肉などにできる口腔ガンだったというケースもある。

こうした重要な病気を見逃さないためには、口内炎などの小さなトラブルでも気軽に相談できるかかりつけの歯科や内科を日頃から作っておくことが大事だ。そのほかの診療科としては耳鼻咽喉科や皮膚科でも診てもらえる。

歯の形が尖っていて、いつも同じ場所の粘膜を噛んでしまう場合は、一度治っても再発したり、治りにくかったりするので、かかりつけの歯科医に丸く削る処置をしてもらうといい。

口内炎は、疲れた体が悲鳴を上げているサインの場合もある。「放っておけば治るだろう」と思う人がほとんどだが、「今の生活に無理はないだろうか」と見直すことができれば、生活習慣を改善するきっかけとなる。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/09/13号、花上 伸明=帝京大学医学部附属病院(東京都板橋区)歯科口腔外科粘膜外来担当]
[イラスト:市原すぐる]

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