【夏パテした胃に効く食事】

日本の高温多湿の夏はつらい。営業職のFさん(40歳)は、猛暑の中、スーツ姿で奮闘していたが、夏バテにより食事が取れず、体重も減少。「外回りもきつい」と診察室でこぼした。

夏の終わりから秋口にかけて、胃が食べ物を受け付けなくなる人は多い。夏の食欲不振には、カレーの香辛料を代表とする天然のスパイスを利用するといい。私がお勧めしたいのが、大根 おろしである。夏大根の辛みはスパイスの働きをして、食欲を増す。胃の血流量を増やし胃腸を刺激することで、嬬動(ぜんどう)運動も活性化する。

大根はジアスターゼというでんぷん分解酵素や、プロテアーゼというたんばく分解酵素などを豊富に含んでおり、疲れた胃の消化を助けてくれる。これらの酵素は熱に弱いため、生で食すこと。また、細かくすりおろして食べることで、酵素の働きが増す。天ぷらなど油分が多い食事には、大根おろしを添えたい。

ほかにスパイスになる食材には、表のようなものがある。これらのスパイスで食事の味つけをすると、減塩効果もあるので、高血圧や心臓病の人にはなおいいだろう。

胃に優しい食材としては、肉なら鶏のささみ(胸部)がいい。胃に停滞する時間が最も短く、胃の消化運動が必要ないのがたんばく質。逆に、長く胃に停滞して消化に時間がかかるうえ、 胃が活発に働かねばならないのが脂肪である。脂肪が少ない良質のたんばく質である鶏のささみは、胃に優しく、病院の術後食にも使用されている。

「ぬるぬる」「ねばねば」食材を
海藻類では、ぬめりのあるワカメやコンブなどを取りたい。ぬめりの成分であるフコイダンは、胃潰瘍などを引き起こすピロリ菌が胃粘膜に接着するのを防ぐ。胃炎を軽減するほか、免疫 力活性化作用も期待されている。 また、イカやタコ、マグロなどに含まれるタウリンは、胃の中にできやすい発ガン物質のモノクロアミンを解毒するほか、ストレス性の胃炎を軽減することが証明されている。タウリンの効果はビタミンCを加えると持続するので、レモン汁をかけると効果大だ。

野菜で取りたいのは、ねばねばしたオクラやモロへイヤなど。このねばねばの成分であるムチンは、胃粘膜を強化する。また、ブロッコリーには抗ピロリ菌効果があり、胃炎を軽減するこ とが分かっている。

夏バテの原因は、自律神経の乱れも大きい。食事だけでなく、生活改善も心がけたい。特に、エアコンのつけっぱなしは、生来備わっている体温調節機能を乱すもととなる。会社では仕方 がないが、自宅ではタイマーを使用して就寝時に使うなど工夫したい。

Fさんは、こうした夏バテをした胃に効く食事を始め、1週間ほどで元気を取り戻した。私は診療が終わった後にFさんと、タウリンが豊富に含まれているドイツ酒、レッド・ベア・エナジ ーにレモンをしぼって乾杯した。

[出典:日経ビジネス、2010/08/30号、江田 証=江田クリニック院長]

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