【合併症が怖い糖尿病】

特定健康診査で高血糖を指摘され、再検査で糖尿病と診断されたGさん(46歳)。医師の指導で食生活などの生活習慣を改善すると、血糖値も安定してきた。

厚生労働省の調査によると、国内で糖尿病患者と予備軍は2210万人に上り、国民の6人に1人は糖尿病またはその可能性があると言われている。

糖尿病は、血糖を調節するインスリンというホルモンが不足したり、その作用が不十分なために、常に血糖値が高い状態になる病気。通常、口にした食べ物は、胃腸で消化されてブドウ糖 として吸収される。これが血液の流れによって体中の細胞に運ばれ、筋肉や臓器のエネルギー源となる。インスリンは膵臓から分泌され、血液中からブドウ糖を取り込む手助けをする。しかし、何らかの理由でその機能が不十分になると、ブドウ糖をうまく取り込めなくなり、血液中のブドウ糖濃度「血糖値」が高くなる。これを高血糖と言い、この状態が続くのが糖尿病だ。

もともとインスリンの分泌機能が低かったり、インスリンが効きにくい(インスリン抵抗性)といった遺伝的要素に加え、肥満、運動不足、ストレスなどの環境因子及び、加齢が加わって発症する。特に肥満はインスリンの感受性が低く、糖代謝を支える膵臓のインスリン分泌機能が低いと血糖が上昇しやすい。また、アルコールやストレスは過食を引き起こすことがあり、肥満になりやすいので気をつけたい。親類に糖尿病患者がいる場合は、遺伝的素因がある可能性も心得ておこう。

糖尿病になると、のどの渇き、多尿などが起こることもあるが、症状がない場合も多い。そのため、特定健康診査などで高血糖を指摘され、再検査で糖尿病と分かるケースが増えている。

「HbAc1値」に注目
病院では、空腹時などの血糖値とHbAIc値(過去1〜2カ月の平均血糖値を反映した指標)を採血によって確認し、BMI(肥満度)、血圧、コレステロールや中性脂肪の値や、糖尿病合併症の有無などが調べられる。糖尿病と診断されたら、食事や運動療法を行う。

身長約170cmなら食事は1日1600〜1800キロカロリーを目安に、就寝の2〜3時間前には夕食を済ませることなどが指導される。運動は、毎日8000〜1万歩歩くなど有酸素運動を心がける。身長約170cmでは体重65kg前後を目標に、毎日体重を測るクセもつける。こうした生活習慣の改善で適正体重に近づけることで、HbAIc値9%程度の要注意の人が6.5%未満の正常値になることも珍しくない。

一方で、食事・運動療法に取り組んでもHbAIc値6.5%以上が2〜3カ月続くようなら、薬物療法が検討される。ビグアナイド薬などのインスリン抵抗性を改善させるタイプと、スルホニルウレア薬などのインスリン分泌を促進させるタイプの服用が一般的だ。最近では、低血糖などの副作用が少ないインスリン分泌促進薬・DPP4阻害薬や皮下注射の「ビクトーザ(一般名:リラグルチド)」などの新薬も有効とされる。それらで十分な効果が得られない場合は、腹部や腕、足などにインスリン注射をすることになる。

治療で血糖値をコントロールできていれば、糖尿病はそれはど怖い病気ではない。糖尿病の本当の問題は、合併症にある。高血糖を放っておけば、10〜20年経って深刻な合併症を引き起こすことがある。網膜症にかかって失明したり、腎症になって人工透析が必要になることもある。神経症になれば、足の壊疽などの誘因になる。合併症を避けるためには、糖尿病の早期発見・治療が重要である。

今年、日本糖尿病学会により11年ぶりに糖尿病の診断基準が改定となった。今まで血糖値だけだった診断材料にHbAIc値が追加されたため、患者の見落としが減り、その数値から迅速な治療の見通しを立てられる。特定健康診査でもHbAIc値が調べられているので、注意して見てはしい。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/08/9-10号、大西 由希子=朝日生命成人病研究所(東京都千代田区)糖尿病代謝科]
[イラスト:市原すぐる]

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