【今から始める認知症予防】

当院に通院しているAさん(45歳)から、親族が60歳の若さで認知症と診断され、「認知症は遺伝するものなのか」との相談を受けた。親族の方には、物忘れ、判断力の低下、時間と場所の見当がつかないといった症状が見られ、頭部MRI(磁気共鳴画像装置)の結果と総合して、アルツハイマー型認知症と診断されたという。

現在、日本には認知症患者が200万人以上存在する。2020年には300万人近くに達し、実に65歳以上の10人に1人が認知症という時代が到来すると予測されている。

認知症は2種類に大別される。最も多いのはアルツハイマー型認知症で、全体の約7割を占める。特殊なものを除けば、残りが脳血管性認知症である。

アルツハイマー型認知症の多くは、遺伝の関与は少ない。アルツハイマー型認知症は、脳神経細胞にβアミロイドたんばくという物質が蓄積し、これが脳神経細胞を破壊し、大脳皮質が萎 縮してしまうことで起こる。しかし、それがなぜ起こるのかは現代医学では解明されていない。

前兆が見られたら早期受診を
予防には、大規模な統計試験で有効性が確認されているものがある。最も確実なのは運動だ。週に3〜4日軽い運動をするだけで、アルツハイマー型認知症になる確率が有意に下がる。

食事に関しては、緑黄色野菜と果物、魚を取り、過食を避けて「6割食」にすることが有効だと言われている。また、カレーのスパイスの1つ、ターメリック(ウコン)に含まれるクルクミンには、βアミロイドたんばくを減らす効果があることが動物実験で確かめられており、インド人に認知症が少ないことと関連づけられている。

薬剤では今のところ、「アリセプト」の効果が高い。認知症の症状が見られた場合は、これを早期に使い始めることで認知症の進行を遅らせることができる。最近では、アルツハイマー型認知症を早期に診断するPIB−PET(陽電子放射断層撮影装置)検査が進歩している。βアミロイドたんばくに対する抗体(免疫)療法の治験も進んでいる。

一方、脳血管性認知症は、脳の血管が詰まって脳梗塞を起こすことで、脳が萎縮して認知症になる。従って、脳梗塞をはじめとする生活習慣病を予防することで、認知症になるリスクも低 下できる。血圧、コレステロール、血糖値を正常に保つほか、禁煙も有効だ。禁煙には「チヤンピックス」という飲み薬による禁煙法が保険適用になっており、禁煙成功率が7割と高い。 なかなか禁煙できないという人は、医師に相談してみるといいだろう。

脳神経は壊れてしまうと元には戻らない。いかに脳神経細胞の状態を維持するかが重要だ。もし、物忘れ、何度も同じことを聞く、場所や時間が分からないなどの症状が見られたら、一度 医師に相談してみてはしい。認知症は、早期の診断と治療が肝要である。

[出典:日経ビジネス、2010/07/26号、江田 証=江田クリニック院長]

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