【手足口病に感染したら】

幼稚園に通う娘の手足口病がうつってしまったKさん(44歳)。手や口に水疱ができているが、会社に行って他人にうつさないか心配している。

手足口病とは、口の中の粘膜や、手のひら、足の裏、ふくらはぎなどに水疱ができる、ウイルス性の感染症だ。多くは乳幼児がかかる一般的な「夏カゼ」の1つである。だが、Kさんのように大人でも感染する例がまれにある。

実は、今年は手足口病の感染者が、過去5年間の同時期と比較して多いことが、国立感染症研究所・感染情報センターの調査で分かっている。6月20日までで多かったのは、山口県や大分県、高知県、宮崎県などの西方で、東日本では本格化していないようだ。しかし、こうした感染症は、北上する傾向があるので、今後、関東以東でも増加する可能性がある。

手足口病の原因となるウイルスは、コクサッキーA16ウイルスや、エンテロウイルス71など。今年の発症例からは、重症化を引き起こしやすいエンテロウイルス71が多く検出されているとの報告があるので、注意が必要だ。口や手のひらなどに水疱ができるといった症状から、口蹄疫との関連を気にする人もいるようだが、原因ウイルスは異なる。

手足口病はほとんどが乳幼児に見られる疾患である。それは、一度感染すると終生免疫ができるためと考えられる。しかし、前述したように、手足口病の原因ウイルスは数種類あるので、 成人しても感染することがあるのだ。

症状は大人も子供も一緒
主な症状は大人も子供も同じで、水疱が出る。発熱するのは患者の3分の1から2分の1程度と、必ずしも発熱するわけではない。発熱しても38度以上の高熱になることはほとんどない。

ただし、今年、検出例が多いエンテロウイルス71では、無菌性髄膜炎や小脳失調、脳炎といった中枢神経合併症が起こりやすいとされている。こうした重症化を招くケースはごくまれではあるが、手足口病と診断された後に発熱が続く、高熱が出る、頭痛や吐き気を伴う、痙攣がある、といった症状があれば、再度医療機関を受診してほしい。

手や足にできる水疱は、粟粒大から小豆大で、痒みや痛みはないことが多い。水痘というと水疱瘡と見分けがつきにくいと思われるかもしれないが、手足口病の水疱は、水疱瘡と異なり破 れないという特徴がある。一方、口の中にできる小水疱は、できてしばらくすると破れて口内炎を引き起こすので、痛みを伴うことがある。

発疹は、口、手のひら、足の裏すベてに必ず出るわけではなく、どこか1カ所というケースも少なくない。

発疹は2〜3日で褐色の斑点になり、5〜6日で消失する。冒頭でも紹介した通り、手足口病はごくありふれた夏カゼであり、多くは安静にしていれば1週間程度で自然に治る。特別な治療は 必要ないことがほとんどだ。ただし、下痢を伴う場合は整腸剤を、発熱している場合は解熱剤を、口の中の痛みが強い場合は局所麻酔作用のある薬を塗布するなど、対症療法を行うことはある。手足口病専用の治療薬はない。

留意したいのは、口内炎ができた時の栄養補給だ。数日間口の中の痛みが続くので、飲食しにくい。そのため、口内炎ができている間は、刺激物や味の濃いものを避け、粥やうどんなどの軟らかい食べ物を薄味にして取るといいだろう。水分補給には、スポーツドリンクも有効である。

手足口病は、唾液などからの飛沫感染などが主な感染ルートだ。感染源とならないためには、少なくとも、発疹が消えるまでは自宅で安静にしていることが望ましい。

また、ウイルスは便中にも潜んでいる。便中のウイルスは症状が治まった後も数週間にわたって排泄されると言われているので、手洗いとうがいの励行も大切だ。
(談話まとめ:武田 京子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/07/19号、永井 雄一=永井小児科内科医院(東京都世田谷区)院長]
[イラスト:市原すぐる]

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