【手指や足裏にできる水疱】

足裏と両手指の側面に、小さな水ぶくれができているのに気づいたMさん(43歳)。 痒いので、水虫が手にうつつたのでは?と思っているのだが。

手指の側面(手指の外側と内側との境目の部分)や手のひらに、小さな水疱ができたといって受診される患者さんによく見られる疾患に「異汗(いかん)性湿疹」というものがある。八割方は手に発症し、足に発症することも珍しくない。

足に発症した場合は足白癖、いわゆる水虫と勘違いされがちだが、白癖菌が原因である水虫とは異なり、皮膚のほかの部位や他人に感染することはない。また、水庖が片手ではなく、両手に発症することで、何かに接触したことで発症する接触皮膚炎との見分けがつきやすいのも特徴だ。

異汗性湿疹は、「汗疱」(かんぽう)とも言う。汗疹(あせも)と関係しているものの、いわゆる汗疹とは別の病気である。汗疹は、何らかの原因で汗を排出させる汗管が詰ま り、そこに炎症が起きる。一方、異汗性湿疹は、手のひらや足の裏に多量に汗をかくことにより、汗の影響で皮膚に湿疹反応が表れる。

直径1〜2mm程度の透明の小さな水痛が、手指、手のひら、足裏や足の側面などに生じるといった症状が見られる。中でも典型的な発症部位は手指の側面であり、これらの水疱は痒みを伴うこともある。

この疾患で受診される患者さんに多く見られるのが、アトビー性皮膚炎の人や多汗症の人である。また、何らかの金属アレルギーや薬物アレルギーがある人も、発症率が高くなる。汗でアレルゲンの溶出が促され、症状が表れるのだ。発症には、こうした体質的要因が関係すると言われているが、食品添加物や防腐剤などが要因となることもある。精神的ストレスから手足に多量の発汗が見られ、そのせいで発症するケースもある。手のひら、足の裏は、汗菅が非常に多い部位で、毛穴がなく皮脂も出ないため、発汗の影響をダイレタトに受けやすい。

塗り薬での治療が有効
異汗性湿疹は、汗をかきやすくなる初夏の発症が目立つ。季節の変わり目になると再発するという人もいる。放置していても自然治癒するケースが多いのだが、人によっては症状が悪化し、受診せざるを得ない場合もある。

症状の始まりは、プツプツと小さな水疱ができただけだったのが、痒みを伴うようになったり、時間が経過するにつれ水疱がつながり合って大きくなったり、水疱が破け、皮膚がガサガサになったりすることがある。皮がむけた状態が広がってしまうと、見た目の印象も悪くなり、人前に手をさらすことを苦痛に感じるという人もいる。感染する病気のように思われてしまうのではないかと気に病むなど、精神的負担も大きいようだ。

軽症の場合は、市販の尿素入り保湿クリームを塗るだけでも、症状が改善する。水疱が破け、いったん皮がむけきってしまえば、その後は自然に軽快することが多い。だが、かき壊して患部がじゅくじゅくしてしまい、なかなか完治しないケースもある。

病院では、尿素軟膏やサリチル酸ワセリンなどが処方される。痺みがひどく湿疹が重症の場合は、ステロイド外用薬を使用して治療する。多汗症を伴う場合には、多汗症の治療を行うこともある。金属アレルギーや薬物アレルギーなど、原因がはっきり分かっている場合は、それらを除去することも重要である。

とはいえ、原因がはっきり分かっている患者さんの方が少ないのが現状だ。治療は、痒みがあればそれを抑え、かさつきには軟膏での保湿や古い角質の除去など、対症療法が中心となる。また、水疱ではなく膿を持った膿疱が広範囲に広がっていった場合は、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症という別の難治性の皮膚疾患の可能性も考えられる。症状が悪化している場合は、早めに皮膚科を受診し適切な治療を受けてほしい。
(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/06/28号、住吉 孝二=順天堂大学医学部附属順天堂医院(東京都文京区)皮脈斗准教搾]
[イラスト:市原すぐる]

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