【危ないいぴきを見分ける】

友人たちと1泊で温泉旅行に出かけたFさん(34歳)。翌朝、「いびきがうるさかった」と 指摘された。自分では気がつかなかったが、それ以来、気になってしまう。

睡眠時に発生する異常な呼吸音であるいびき。眠っている本人たは自覚がなく、Fさんのように周囲から指摘されない限り分からないことも多い。いびきをかく人は40代以降に多く、男性は女性の2倍以上と言われている。

いびきは、咽頭(口の奥の鼻腔の下から食道と気管の入り口までの部分)が何らかの原因で正常な状態よりも狭くなり、その空間を空気が通過する際に振動が起こるために発生する。咽頭の狭窄が起こりいびきが発生する要因は様々あり、重複していることも多い。

まず挙げられるのが、肥満。日本人の場合は、BMI(体格指数=体重kg÷身長m÷身長m)27程度を超えるといびきをかきやすい傾向がある。また、40代以上に多いのは、加齢により上気道の筋肉が緩み、空気の通り道を狭くしていることが考えられる。太り気味の人は、いびき対策と生活習慣病予防のためにも、標準体重を維持するよう努めたい。

睡眠時の環境や呼吸の仕方、体位なども関係する。寝室の気温や湿度、照明の明暗や音の有無、枕の高さなどをチェックして、寝心地のいい環境を整えてみる。習慣的に口呼吸をしている人は、普段から鼻呼吸をするよう意識するといいだろう。仰向けで眠ると舌が落ち込んで咽頭を狭めるので、横向きやうつ伏せ、上体を少し高くして寝てみるのもいい。軽いいびきなら、これらの対策で解消することもある。

歯の噛み合わせ不良や骨格が影響することもある。特に顎の形が小さく細めだと、若い女性でもいびきをかきやすい。蓄膿症などの鼻の病気、扁桃肥大や咽頭部の腫瘍といったのどの病気のほか、アレルギーや風邪による鼻腔の炎症で鼻がつまるといびきの原因になる。こうした疾患の治療も、いびきの改善に働く。

そのほか就寝前の飲酒、睡眠薬や精神安定薬、抗ヒスタミン薬などの服用も、いびきを発症しやすくなる。疲労やストレスも間接的な要因になると言われている。

録音してリズムや状態を確認
では、どのようないびきが健康上問題となるのか。

いびきは症状によって、大きく2種類に分けられる。呼吸の往復がリズミカルないびきは「単純いびき症」と言う。健康的には直接大きな問題はないが、睡眠の質は低下することが多い。部分的な呼吸の乱れや閉塞が1時間に5回以下の場合は、単純いびき症と考える。単純いびき症を積極的に治療するかどうかは難しいところだが、ほかの要素も考え合わせて判断していく。

最も問題となるのは、「睡眠時無呼吸症候群」だ。10秒以上続く無呼吸が、1時間に5回以上繰り返されるようになると、睡眠の質はかなり低下する。このため、起床時の頭痛や日中の眠気、集中力の低下などのほか、高血圧や不整脈、血管や心臓の異常などの合併症 が生じることもある。

いびきを指摘されたり、気になった場合は、1度録音してみるといい。いびき音のリズムが乱れていたり、無呼吸が長く続いていたりしたら、耳鼻咽喉科などの専門医を受診する。

受診後は、必要に応じて終夜の睡眠ポリグラフ検査で、脳波や呼吸、眼球運動、心電図や筋電図などを測定するほか、遠赤外線カメラでの行動観察や音声録画などを行う。これにより、ノンレム睡眠、レム睡眠、覚醒や無呼吸の状態を評価し、診断する。

治療はマウスピースによる歯列矯正、薬物療法、CPAP(持続的気道陽圧法)、手術などを多角的な視点で検討する。口蓋垂(のどちんこ)の周辺をレーザーにより切除する軟口蓋レーザー治療は日帰りでできるメリットなどがあるが、風評だけで安易に考えず、医師とよく相談してほしい。
(談話まとめ:杉元 順子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/06/21号、鈴木 雅明=帝京大学医学部(東京都板橋区)耳l咽喉科准教授]
[イラスト:市原すくる]

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