【背中の激痛は「石」を疑う】

Sさん(50歳)が背中の激痛を訴え、転げ回るようにして来院した。数カ月前からみぞおちと背中に激しい痛みが出たり治まったりを繰り返しておりかかりつけの医師に「胃けいれん」と診断され、胃薬が処方されていたとのことだった。

背中やみぞおち(上腹部)に激痛が突発したら、まずは胆管結石(胆石)発作や尿菅結石発作など「石」による痛みを疑う。Sさんにすぐさま腹部超音波検査を行うと、胆嚢が大きく腫れ上がり、腹膜炎を起こしていた。

肝臓で作られた胆汁は、胆管を通って、一時的に胆嚢内にたまっている。胃の中に食物が入ると、その刺激で胆嚢が縮み、胆汁が十二指腸内に流れ出し、食物の消化を助けるシステムになつている。

ところが、脂質の多い食事を取ることで胆汁内のコレステロール量が増加したり、胆嚢の働きが鈍くなったりすると、胆石が作られやすくなる。胆石にはいくつか種類があるが、最も多いのがコレステロール結石である。これは、胆汁に含まれるコレステロールが結晶化し、徐々に大きくなって結石となったものだ。

Sさんの場合、胆嚢の中で形成された胆石が胆嚢の出口を塞いでしまい、胆嚢内で細菌感染が生じ、胆嚢炎を起こしていた。Sさんはこれまで何度も胆嚢炎を繰り返していたわけだが、結果的に放置してしまったことで、慢性胆嚢炎が進行し、胆嚢と周辺臓器との間で激しい癒着を起こしていた。

このため、本来は腹腔鏡下胆嚢摘出術(お腹に3カ所の穴を開け、腹腔鏡を入れて胆嚢を摘出する体に負担の少ない手術)で切除できたはずが、開腹手術をすることになってしまった。

発作から72時間以内が勝負
胆石の病状を重くしないためには、早期に正確な診断をつけてもらうことだ。右のあばら骨の下付近や背中の重苦しさや痛みが続く場合には、腹部超音波検査を受けてはしい。Sさんのように胆石の痛みを胃の痛みと誤診されている人は意外に多い。

背中やみぞおちに激痛が突発したほか、背中やみぞおちの痛みが長時間持続し次第に強くなる、吐き気や嘔吐、発熱を伴うなど、急性胆嚢炎が疑われるような兆候を感じたら、早急に受診すること。胆石治療にはゴールデンタイムがあり、痛みが出てから72時間以内なら体に負担の少ない腹腔鏡での手術が受けられる。その時間を過ぎると、炎症癒着が進んで、3カ月程度待たないと腹腔鏡下での手術は受けられなくなり、開腹手術になる可能性も高まる。

胆石による胆嚢炎は、一度起こすと繰り返しやすくなる。普段から胆石を作りにくい生活を心がけることも大切だ。最後に、胆石を予防するための7カ条を挙げておくので、参考にしてほしい。

[出典:日経ビジネス、2010/05/31号、江田 証=江田クリニック院長]

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