【脱毛は受診レて薬で改善】

洗髪するたぴに抜け毛が増えていると感じているDさん(39歳)。妻にも薄毛を措摘され、他人の日も気になって仕方がない。育毛刑を使ってみようかと悩んでいる。

毛髪は、外界からの刺激や直射日光などから頭部を守り、体内にたまった水銀などの有害物質を体外へ排出する役割を果たしている。1つの毛穴から2〜5本ほど生えており、総本数は平均10万本程度。髪の毛1本1本には寿命があり、1日平均50〜70本は自然に抜け落ちる。だが、通常は再び生えては抜けることを繰り返している(ヘアサイクル)。毛髪を作 る毛包は、成長期(2〜6年)、退行期(2週間)、休止期(3〜4カ月)という経過をたどっているのが一般的だ。

しかし、何らかの原因でヘアサイクルが崩れると、新しい毛が生えてこなかったり、コシが弱くて細い産毛の状態から成長せずに抜け落ちたりすることがある。成人男性に一番多い、このような脱毛を「AGA(男性型脱毛症)」と言う。AGAの人は全国で1260万人、そのうち気にかけている人は800万人、何らかのケアを行ったことのある人は650万人と言われている。

代表的な原因は、遺伝のほかに、男性ホルモンの影響が大きい。AGAの脱毛部には、活性型男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)が高濃度に見られる。DHTは、受容体(レセプター)と呼ばれるたんばく質と結合し、髪を生み出すもとである毛母細胞に髪の成長を抑制する信号を発信。毛母細胞は髪の成長期を数カ月〜1年に短縮させてしまい、髪の毛は長く太く成長する前に抜けてしまう。

AGAは、思春期以降に額の生え際や頭頂部の髪が、どちらか一方、または双方から薄くなっていくのが特徴だ。具体的には、洗髪やブラッシング時に抜け毛が多い、太くてコシがあった髪が産毛のような細い髪になってしまうといったことが起こってくる。

悩みを話すだけでも受診は有効
AGAは進行性なので、何もせずに放っておくと髪の毛の数は減り続け、徐々に薄くなっていく。気になった時は、市販の育毛剤を使うことも1つの方法だが、皮膚科などで専門医に診てもらうという選択肢もある。

診察では問診と視診が行われる。視診で重要なのは、本当にAGAかを見極めることだ。一言で脱毛と言っても、円形や卵形に髪の毛が抜ける円形脱毛症、フケや抜け毛が増える粃糠(ひこう)性脱毛症、ストレスなどで自分の髪の毛を抜いてしまう抜毛症など様々ある。

AGAと診断がつけば、市販の育毛利の説明をされたり、希望すれば薬が処方されるだろう。近年、飲むタイプの治療薬フイナステリド(商品名プロペシア)が登場したことで、脱毛抑制効果が期待されている。塗り薬のミノキシジルは血管拡張作用があり、発毛の促進に役立つ。これらを併用すると効果が高まる。1カ月ごとに通院し半年くらいすると、初診から比べて、脱毛抑制や遅延、髪にコシが出るなど、何らかの効果が得られる人が多い。

洗髪時はシャンプーを泡立て、頭皮をマッサージするように優しく洗う。強すぎたり、1日に何度も洗ったりすると毛穴の油脂まで取れてしまい、皮膚のバリア機能が弱くなる。日常生活では、過度のストレスを感じると血管の筋肉が収縮して細くなり、毛根部に栄養が十分運ばれなくなるので注意したい。禁煙も重要だ。また、食事の栄養バランスに気を配りたい。亜鉛やビタミンが不足すると髪にコシがなくなるので、特に摂取してほしい。

脱毛が気にかかり始めると、仕事の能率が下がり、自分に自信がなくなるといった精神的苦痛が深刻な人も多い。今までは「脱毛なんかで受診していいのか」「恥ずかしくて相談できない」などの理由で、病院の敷居は高かったかもしれない。しかし、人に言えない脱毛の悩みを医師に吐き出せば、気持ちが楽になるだろう。それだけでも、受診の意味は大きいはずだ。
(談話まとめ:内藤 綾子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/05/31号、斉藤 典充=北里大学病院榊奈川県相模原市)皮膚科 毛髪外来担当]
[イラスト:市原すぐる]

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