【血管年齢を若く保つ】

同世代の友人が心筋梗塞で倒れ、ショックを受けたSさん(52歳)。60歳までは心配ないと思っていた。予防を心がけたいが、何をしたらいいだろう。

血管の中でも特に動脈は、加齢とともにしなやかさを失い、硬くなっていく。この「動脈硬化」という現象は、高血圧症や糖尿病、肥満によって起こりやすくなる。それに加え、喫煙やストレス、運動不足、欧米化した食生活のような生活習慣によっても、その進行が加速する。そして動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった病気の原因となる。

例えば、悪玉コレステロールと呼ばれるLDL(低比重リボたんばく)コレステロールは、酸化して動脈壁にくっつき、どろどろした粥腫(じゅくしゅ)を作り、動脈硬化につながる。さらにその粥腫が破れると、そこに血小板が凝集して血の塊である血栓を作り、血管を狭める。また、血栓が剥がれて別の部位に移動すると、心筋梗塞や脳梗塞、足の壊疽(えそ)の原因になる。

血管は、外膜、中膜、内膜の3層からできている。外膜は血管を保護し、中膜は弾力性のある平滑筋やコラーゲン、エラスチンなどからできている。内膜は内皮細胞から成り、血管の若さを保つために極めて重要な役割を果たしている。

内皮細胞は一酸化窒素やプロスタサイクリンといった「血管弛緩因子」(俗に“しなやか物質”)と呼ばれる物質を分泌して、血管壁の緊張をほぐし、血管をしなやかに保つ。またプロスタサイクリンは血栓ができるのを防ぎ、血管を広げて血流を維持する。

青い背の魚や豆腐が有効
そこで血管を若く保つには、血管内皮細胞に良い環境を作ることが大切である。具体的には@後述の血管内皮細胞に良い食生活をする、A適度な有酸素運動をする、B喫煙や暴飲暴食をやめ、ストレスの少ない生活を送る、C高血圧症や糖尿病、高脂血症があれば治療を受ける、ことなどだ。

血管内皮細胞に良い食品としては、イワシ、サンマ、アジなど、青い背の魚がある。これらは、血栓形成を予防するEPA(エイコサペンタエン酸)と、LDLコレステロールや中性脂肪を減らすDHA(ドコサへキサエン酸)を含んでいる。

次に、豆腐や納豆などの良質なたんばく質を含む大豆製品だ。これらは、LDLコレステロールの酸化を防ぎ、血管壁に粥腫ができるのを防ぐことができる。

食物繊維を十分に取ることも大切だ。食物繊維には、水溶性と不溶性のものがある。水溶性の海藻類やこんにやくは、血液中のコレステロールを下げ、酸化や粥腫の炎症を抑えると考えられている。不溶性の野菜、中でもゴボウやキノコ類は、食物の吸収を緩やかにし、血糖値の急激な上昇を防ぐ。

さらに緑黄色野菜には、カロチンやリコピン、ポリフェノールなど、抗酸化作用のある色素が含まれており、体内の活性酵素を除くことで、動脈硬化を防ぐ。

そのうえ、野菜や果物に含まれるカリウムには、取り過ぎた塩分やナトリウム分を排泄して、血圧を下げ、直接血管を保護する役目もある。

こうして見てみると、血管に良い食生活としては、日本食がぴったりだという結論になる。ただし、日本食はナトリウムを取り過ぎがちなので、塩辛いものを好む人はその習慣を徐々に直し、醤油や味噌、塩を控え、味つけを工夫することも必要だ。

加えて、適度な運動も大切である。ウォーキングや水泳のような有酸素運動は、血流を促し、一酸化窒素やプロスタサイクリンの分泌も促進し、動脈硬化ができにくい環境を作る。

このような生活習慣を心がけることで、血管年齢を若く保ち、それと同時に、生活習慣病やメタポリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防にもつながる。
(談話まとめ:當麻 あづさ=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/05/10号、安達 実=ワイキキ緊急医療クリニック(米国ホノルル)医学博士]
[イラスト:市原すぐる]

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