【善玉菌の増加で腸を元気に】

帰宅途中に立ち寄る店で、ついど−ルを飲み過ぎてしまうDさん(49歳)。最近、下痢がなかなか治らないうえ、鳳界を引きやすくなったような気がする。

人の腸の中には、体に良い作用をもたらす善玉菌と悪い作用をもたらす悪玉菌、食べ物や体調によってどちらにも傾く日和見菌の3種類が存在している。これらの細菌は100種類以上100兆個はあるとされ、仲間を増やそうとお腹の中で勢力争いをしている。

ビフイズス菌や乳酸菌に代表される善玉菌は、炭水化物や食物繊維をエサとして乳酸や酢酸といった有機酸を作り、腸内を酸性の環境に保つ。善玉菌が腸内で優勢になれば悪玉菌の繁殖は抑えられ、便通を整えたり、食べ物の消化・吸収を助け、免疫力を高めるなど、体全体の健康維持に欠かせない役割を果たしてくれる。

一方、ウェルシュ菌や大腸菌に代表される悪玉菌は、たんばく質などを分解してアンモニアなどの有害物質やニトロソアミンなどの発ガン物質を作り出す。悪玉菌が優勢になると腸内環境はアルカリ性になり、悪玉菌はさらに増殖し、日和見菌も悪玉に傾くものが増えていく。

そのため、下痢や便秘のはか、肩こり、肌荒れ、体臭、高脂血症などの生活習慣病、腸炎や過敏性腸症候群といった病気の誘因になる。また免疫力も低下し、風邪を引きやすくなったり、花粉症などのアレルギーも起こしやすくなったりすると言われている。

通常は、腸内環境は加齢とともに悪化し、55歳を過ぎたあたりから悪玉菌が少しずつ増えていく傾向にある。しかし最近では、30代の若年層の腸内環境が悪化している。それには、食生活の欧米化や運動不足、ストレスが引き起こす便秘と大きく関係がある。慢性的な便秘は悪玉菌の温床となり、腸内を腐敗させやすいからだ。

注意したいのは、悪玉菌が大腸ガンの原因となる胆汁酸代謝物などの発ガン物質も発生させること。実際、腐敗便がたまりやすい直腸とS状結腸に大腸ガンは多発している。

発酵食品を毎日食べる
腸内環境を整えるには、善玉菌を増やす食品を積極的に取ることが重要だ。青菜野菜や根菜類に含まれる食物繊維のほかに、ビフイズス菌や乳酸菌を多く含む発酵食品が適している。ヨーグルト、乳酸菌飲料、チーズ、漬物、納豆、キムチなどがお勧めだ。ただし、ビフイズス菌をはじめとする多くの乳酸菌は胃酸や胆汁酸に弱く、ほとんどが腸に届く前に死んでしまう。

そこで大切なのが、食べる量と、毎日食べ続けることと、食べ物で胃酸が薄まる食後に食べること。例えばヨーグルトなら、200gを毎日食べ続けると2週間ほどで腸内の善玉菌が約10%増え、善玉菌優位の腸内環境が保てることが分かっている。最近では、生きたまま腸に届く乳酸菌やビフイズス菌が取れる「プロパイオテイクス」をうたったヨーグルトや乳酸菌飲料なども人気だ。

以前から便秘は腸のトラブルの定番だが、最近の男性に多いと感じるのは下痢症状。働き盛りの人は、多かれ少なかれ何らかのストレスを抱えている。それが自律神経の交感神経を常に優位にし、腸の蠕動(ぜんどう)運動を乱して便秘や下痢を招く。

また、ビールを飲み過ぎると、小腸で吸収しきれなかったビールの成分が大腸の粘膜を刺激して、下痢を引き起こしやすい。ビールの飲み過ぎは大腸ガンのリスクを高めるといった報告もあるので、はどほどにしておこう。飲み過ぎた翌日は、ヨーグルトなど善玉菌を増やす食品をいつも以上に多く食べ、腸をいたわるよう心がけたい。

40歳を過ぎたら、2年に1度は胃腸科や消化器科で大腸内視鏡検査を受けてほしい。ガンになる前のポリープの段階で治療をすれば、手遅れになることはまずないだろう。腸を守ることは体全体を守ることにつながっている。
(談話まとめ:内藤 綾子:医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/04/19号、後藤 利夫=新宿大腸クリニック(東京都渋谷区)院長]
[イラスト:市原すぐる]

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