【骨折してもやめられない釣り】

東京は神田の生まれで、コンクリートのビルに囲まれて育ったせいか、幼い頃から自然に対する憧れがありました。特に生き物が好きで、学生時代はバードウォッチングが趣味でした。そして、子供の頃から続けているのが魚釣りです。特別なことがない限り、毎週土曜日は釣りに出かけます。この釣行(ちょうこう)が、公私の切り替えといい気分転換になっていますね。

釣り人というのは、次第に大物狙いになっていくことが多いもの。しかし私の場合は、釣った魚の大きさや数で人と勝ち負けを競うことにはあまり興味がありません。仕事では他社と競合していますから、休日の釣りは自分が楽しめればそれでいいのです。

とはいえ、釣りの腕前には自信があります。特にここ10年続けてきたクロダイ釣りは、名人級と自負しています。クロダイはとても難しい魚で、わずかなアタリ(竿先やシカケなどが動く感触)を捉えてしっかりアワセ(魚の口に針をかけること)なければまず釣れません。それだけに、釣り具やエサなどを自分なりに工夫していく面白さがあります。

クロダイ釣りは横浜港で小さなボートをチャーターして、東京湾に出ることが多いのですが、昨年、荒波の衝撃で助骨を骨折。しばらくボートに乗れなくなってしまいました。そこで、「ボートに乗らなくてもできる」と勧められた、へラブナ釣りを始めました。そうまでしても、釣りはやめられないものなのです(笑)。

釣行前夜の飲酒は控える
成り行きで始めたへラブナ釣りでしたが、これが見事にはまりました。へラブナも難しい魚で、釣り技の優劣が明確に釣果にも表れます。クロダイはほぼ極めた私でも、へラブナはまだ名人級の半分も釣れません。これまでの知識や経験をもってしても、まだまだ学ぶことがたくさんあります。

ビジネスの世界と違って、釣りの世界は肩書や年齢などに関係なく、釣りのうまい人が尊敬されます。釣り具屋や釣り場で出会った人に教えを請うこともあり、そうした交流がまた楽しみの1つにもなっています。

へラブナ釣りは、管理釣り場や千葉県の君津市にある三島湖に出かけます。三島湖の場合は、午前4時過ぎに起床して、5時には車で出発します。朝が早いので、前日の飲酒は控えて早めに帰宅。自らハンドルを握るため、事故のないよう、睡眠もしっかり取るようにしています。夜明けから夕暮れまで、トイレの時以外はずっと野外で釣り糸を垂れていますから、体力も必要です。

ゴルフのスコアを伸ばすことには限界がありますが、釣りの場合は、常に未知の魚が釣れるかもしれないというロマンがあります。それが釣りの醍醐味ですね。生涯釣りを続けるために、これからも健康な体を維持していきたいと思っています。
(談話まとめ:田村 知子=フリーランスエディター)

[出典:日経ビジネス、2010/03/29号、宮本 彰=キングジム社長]
[写真:山田 慎二]

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