【検査数が減った健康診査】

特定健康診査を受けた丁さん(47歳)。いわゆるメタボ健診になってから、検査項目が減ったようだが、病気を見逃すことはないのだろうか。

2008年以降、40〜74歳の医療保険加入者に実施されていた基本健康診査(基本健診)が、特定健康診査(特定健診)に切り替わった。「メタボ健診」とも呼ばれている特定健診は、メタポリツクシンドローム(内蔵脂肪症候群)に絞った検査を行うものである。そのため、基本健診時の検査のいくつかは除外され、新たに腹囲の測定などが加わった。

腹囲の基準値を男性は85cm、女性は90cm(女性の基準値が大きいのは、女性にたまりやすい皮下脂肪の厚さを 考慮しているため)とし、「体重(kg)÷身長(m)の2乗」で計算するBMI(ボディー・マス・インデックス)はともに25となっていることは、多くの人に知られるようになったと思う。内臓脂肪の量が多い人ほど、生活習慣病になりやすいため、この検査に移行された。

従来、内臓脂肪の量は、CT(コンピューター断層撮影装置)検査という高額な画像診断で測定してきた。だが、蓄積された検査結果のデータを基に、内臓脂肪の量と腹囲の相関関係を調べることによって、腹囲から内臓脂肪量を予測できるようになったため、より簡便で安価な腹囲測定を採用した。

基本健診に比べて特定健診で検査項目が減ったことを心配する人もいるようだが、それによって不利益を被ることはないだろう。特定健診で異常が見つかれば、そこを詳しく調べていくので、安心してほしい。

むしろ特定健診は、病気を見つけるというより、病気になりやすい人を見つける健診と位置づけられている。病気にかかりやすい人、つまり、内臓脂肪の量が多い人に対して、それを減らすよう働きかけることで、病気の発症を抑えられる。その結果、治療にかかる費用を節減できるので、医療費の増加を抑えることにつながる。

健診後の指導も重要
生活習慣病として挙げられる、糖尿病、高脂血症、高血圧、脳卒中、心臓病などは、前述の通り、内臓脂肪の量が多い人はどかかりやすい。また、内臓脂肪の蓄積があれば、血糖値や血圧、血中の脂質などの値それぞれが病的なレベルに至っていなくとも、これらのいずれもが高い場合は、何らかの生活習慣病にかかるリスクも高まってくる。喫煙の習慣も持っていれば、そのリスクはさらに増大する。

病気発症のリスクを低減するため、内臓脂肪の量を減らす働きかけを、それぞれのリスクの程度に応じて行うことも、特定健診の特徴である。血糖、脂質、血圧の各基準値を超えた項目数に、喫煙歴を加えた4項目から、該当する項目が男性は0、1つ、2つ以上、女性は0、1〜2つ、3つ以上でリスクを区分する。

最も低リスクの層には、生活習慣病についての理解を深め、生活習慣を見直すきっかけとなるような情報を、健診結果などに基づいて作成し、結果とともに配布する(情報提供)。

次にリスクの高い層には、個別面談や集団指導によって、生活習慣の改善に対する個別の目標を設定し、対象者自身が行動を変化させるよう、動機づけを行う(動機づけ支援)。

最も高リスクの層に対しては、動機づけ支援だけでなく、医師や保健師、管理栄養士、健康運動指導士ら専門職の医療スタッフが、継続的にきめ細かな支援を行う(積極的支援)。この指導は3〜6カ月程度続けられ、定期的に頻繁な指導を受けることになる。

特に、積極的支援を受ける人には厳しいものとなるが、早期に確実に病気発症のリスクを下げるためと思って努力してほしい。

健診の結果だけでなく、その後の指導なども含めて尊重し、生活習慣病にかからない体と、それを維持する生活習慣を身につけるように心がけたい。
(談話まとめ:佐藤 千秋=日経PCビギナーズ)

[出典:日経ビジネス、2010/03/15号、宮崎 滋=東京逓信病院(東京都千代田区)副院長兼内科部長]
[イラスト:市原すぐる]

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