【子宮頸ガンの予防ワクチン】

子宮頸ガンの予防ワクチンが、日本でも使えるようになったと聞いたMさん(50歳)。年頃の娘を持つ親としても、その効果や副作用について知っておきたい。

子宮頸ガンの予防ワクチンは、米国では2006年から接種が行われている。海外では既に100カ国以上で使用され ており、日本でも認可が待たれていたが、2009年末から使用できるようになった。

子宮の出口にできる子宮頸ガンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が要因となって発症する。HPVにもいろいろ種類があるが、そのうち同ガンの原因の約6割を担う18型、16型を含むワクチンが今回承認された。 先の2型に加え11型と6型の4種を含むワクチンも、日本では現在申請中で、こちらは同ガンの7割を予防できるという。

HPVは性行為が原因で感染するため、性行為を始める前の11歳くらいに接種を受けておくことが理想的だ。3回接種することで、子宮頸ガンの多くが予防できるのだから、非常に有効なワクチンで、対象年齢の患者には積 極的に勧めている。効果は最低でも6年、恐らくそれよりもっと長期に持続すると考えられており、この点については現在試験が行われている。

子宮頸ガンによる死亡は、米国では年間約4000人(2005年)、日本では国立がんセンターのデータによると、年間約2500人(2008年)に上る。子宮頸ガンはゆっくりと進行するガンで、定期的に膣の塗抹検査を行い、ガンの前段階である異型性を早めに見つけることでも予防可能だ。

米国では、このスクリーニングを徹底することで、過去40年間に子宮頸ガンの患者数や死亡数は劇的に減少し た。HPVの予防ワクチンを受けても、子宮頸ガンのすべてが予防できるわけではないので、スクリーニングも従来通り行っていくことが必要だ。

未婚女性に任意接種を推奨
米国で予防接種の対象となるのは9〜26歳の女性で、その場合、医療保険が適用される場合がはとんどだ。米疾 病対策センター(CDC)では、11〜12歳の女児に対する定期接種を推奨している。実際、テキサス州などでは、学校で集団接種を行っている。また、大学入学の際に接種を義務づけている州もあるなど、米国での同ワクチンに対する取り組みは積極的だ。

一方、日本では、日本産科婦人科学会などが11〜14歳の女児に接種を勧めているものの、対応は自治体などに よって異なるのが現状だ。多くは希望者が費用を負担する任意接種となっている。東京都杉並区などのように、費用を自治体が負担すれば、接種率の増加につながるはずだ。

接種年齢については、ワクチンが開発されて間もないので、私は柔軟に対応している。例えば、27歳以上の女性でも未婚で性交渉がある場合など、その人の状況に応じて接種を勤めている。この場合には米国でも自己負担になり、1回の接種は150ドル程度。日本では3回の接種で4万円程度だろう。

膣の塗抹検査で異型性が見つかった場合にも、それをきっかけに同ワクチンの接種を勧める。ワクチンは、既に感染したHPVや異型性を治療する効果はない。だが、異型性が認められたからといって、ワクチンに含まれる4種のHPVすべてに、既に感染してしまっている可能性は低いので、今後の予防効果が期待できるからだ。

米ハワイの私の診療所では、2006年以来年間およそ100人に接種を行っているが、注射が比較的痛いという以 外、副作用は見られない。治験でも、重い副作用ははとんど報告されていない、安全なワクチンだ。まれに接種直後に転倒する例が報告されているので、接種後15分は、座ったり、横になったりしていることが望ましい。

日本は予防接種後進国と言われるが、ワクチンで防げる病気は予防していくのが賢明だろう。
(談話まとめ:當麻 あづさ=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2010/03/08号、月川 一恵=月川クリニック(米国ホノルル)院長]
[イラスト:市原 すぐる]

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