【鷹狩りとゴルフ】

戦国武将には「鷹数寄」(たかすき)が多い。鷹狩りを無類の趣味とする人たちのことである。山野を駆け巡り、鷹を使って猟をすることのどこが面白いのか、理解しにくいかもしれない。だが、それにかける鷹数寄の情熱は尋常ではなかった。

豊臣秀吉の正室ねねの甥に当たる木下延俊が残した1613(慶長18)年の日記にも、12月の1日から28日にかけて連日のように鷹狩りに出かけているさまが記録されている。雪や大風の吹きすさぶ悪天候であっても、鷹狩りは挙行された。鷹狩りに行けない日にはまだ馴らされていない荒鷹を延俊自らが調教した。もはやその熱中ぶりは好きを通り越している。

そうした鷹数寄の筆頭は、何と言っても徳川家康だ。家康はその生涯において1000回以上の鷹狩りを行ったという。家康の鷹狩りは遠方に出かけることが多く、1週間以上にも及ぶことが珍しくなかった。それを合計すると膨大な日数となる。

鷹狩りのどこに人は惹きつけられるのか。家康はこう述べた。「およそ鷹狩りは娯楽のためだけに行うのではない。遠く郊外に出て、民衆の苦労や風習を察することは言うまでもなく、筋骨を動かして手足を元気にし、風寒や炎暑をもいとわず走り回ることにより、おのずから病気が起こるのを防ぐこともできる。そのうえ、早朝に起きて山野を駆け巡るので、食事がおいしく、夜もよく眠れる」。

もっともらしく聞こえるが、鷹数寄の言い訳である。これらの言葉は、1600(慶長5)年7月、上杉景勝の征伐の途 上で、軍議をそっちのけにして鷹狩りの話にうつつを抜かす家康を家臣が咎めた際に語られた、いわば弁解なので ある。

現代版鷹狩りで長寿に
現代で鷹狩りに近いものと言えば、ゴルフだろう。ゴルフでは、余暇を利用して早朝に山野に出かけ、コースを歩き回って、ボールを追っていく。このボールを獲物に変えれば、鷹狩りと同じである。

中でも共通するのは、その熱狂ぶりだ。「あんなもの、どこが面白いのか」と言っていた人がクラブを握り始めた 途端、頭の中はいつもゴルフのことばかりという「ゴルフ狂」に早変わりする話はよく聞く。この現代の鷹数寄の ことを考えれば、家康の心理もよく分かる。

もちろん、家康の述べたように、足腰が鍛えられる鷹狩りは健康にいい。それが戦国武将には珍しく、75歳(数 え年)という長寿にもつながったと推察する歴史家もいる。ゴルフも同様だ。

スウェーデンのカロリンスカ研究所によると、同一条件でゴルフをしている人としていない人を比較した場合、ゴルフをしている人は死亡率が40%低いという。ゴルフをすると寿命が5年延びると言ったりするのは、あながち嘘ではないらしい。また、ゴルフが上手な人、つまりハンディキャップの低い人ほど、長生きにつながるとも報告されている。

[出典:日経ビジネス、2010/02/15号、堀田 宗路=医学ジャーナリスト]
[イラスト:ヨコイ まこ]

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